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歴史についてこれまで考えてきたことを書いています


by pastandhistories

アームチェアー「パブリックヒストリアン」

 この3月の最大の行事だった5周年記念「パブリックしストリー研究会」・総会が対面で無事終了しました。その3日後に理事を頼まれている「世界史研究会」の発表会、総会がこれも対面で行われ、今日は名古屋大での「歴史フェス」にZOOM参加しました。それぞれ得ることがあったのですが、その内容を記そうとしていたらあることに気づきました。それは昨年のインドネシアでの会の報告をまったくしていなかったということです。大きな理由は会の様子を伝えるために持参していたカメラをホテルに置き忘れてしまったらしいこと。ノートは取ったのですが、あれやこれや都考えている間に、内容もかなり忘れてしまったからです。
 ということに気づいてこのブログを見なおしていたら、昨年入院していたことも書いていないことに気づきました。回復は順調で現在では日常生活に困ることはないけど、かなり出不精になってしまいました。あらためて5周年記念「パブリックヒストリー研究会」について記すと、公募で「パブリックヒストリー」なので基本的には応募者全員に発表してもらうという形でしたが、それぞれに面白く、内容としては十分だったと思います。自分としては、発表前から一番関心のあったのは、加藤千香子さんの「神崎清コレクション」についての発表。高校時代に彼の著作の『革命伝説』が学校図書館にあって、とても面白く読めた記憶があったからです。今回の発表で彼の生涯の概要を知ることができ、また豊富な史料が残されていることを知りました。できれば本を書いてほしいですね。
また除本理史さん林美帆さんの公害問題を基軸とした水島の地域史の掘り起こしも強く印象されました。他の発表にもそうした側面がありましたが、パブリックヒストリーの実践だったからです。自分のアプローチが理論的なことに偏っていたことを反省させられました。座っただけの仕事、いわばアームチェアー「パブリックヒストリアン」。といっても年齢的に実践的なアプローチはできそうもありませんが、実践的アプローチがパブリックヒストリーの重要な要素であることを改めて認識させられました。

# by pastandhistories | 2024-03-17 21:04 | Trackback | Comments(0)

MFSC

 学生時代に、時々自治委委員会(各クラス代表2名によって選出されるので、200人くらい、ほぼ欠席者がなく開催されていた)、代議員大会(これは学生7人につき1人を選出、700人くらい。さすがに全員参加ではなかったけど、定足数割れで不成立ということは滅多になかった)の副議長や議長をしました。党派(当時は民青と新左翼系)の数が接近していたので、中間票を獲得しないと有利な議事運営ができない。そこでバランスをとれた運営をするということで、冒頭の選挙で選ばれたからです。
 思い出は、理屈の合わない議論をすると、すぐに「ナンセンス」というヤジが一斉に出たことです。したがってそれなりの議論ができる学生でないと、議事が進まないし、中間派の支持が得られない。各党派とも指導的地位にある学生は、けっこう筋道を立てた議論をしていて、その点では優秀でした。最近話題の成田祐輔の五月祭招致問題。昔の学生のレベルだったら、あの程度の議論では「ナンセンス」という言葉の一斉合唱を受けたでしょう。というより嘲笑や爆笑の対象。
 この件で話題になっている五月祭の委員をしたこともあります。五月祭実行委員会。実は今回の件で盛んにMFSCという言葉が用いられていて、それがわからなかった。サークルの企画であれば、やはり「企画の自由」ですから認めざるを得ない。実は教養部の時は駒場祭委員会事務局長ということで、サークル企画の調整、予算、教室の割り当てをしました。その時の交渉相手の一つが「原理研」、大学に基盤を置き始めた時代だったからです。たしか久保木氏が直接交渉にも出てきた。しかし、サークルですから、結局は参加を認めました。MFSCも「原理研」と同じでサークルならそれでいいわけで、なんで問題になっているのかがわからなかった。でもこれ五月祭実行委員会、多分 May Festival Steering Committee の略なんですね。自分の学生時代には、こんな言葉は使わなかった。無批判的にこんな言葉が使用されるようになったのは、やはり時代なのでしょう。
 さらにいうと、自分が五月祭実行委員になった時は、実行委員会は各学部自治会や生協などの学生組織の代表と、旧委員会メンバーによる選挙で選ばれていました。民青系が全学的に強かった時代で、自分のときも多数派は民青。自分が唯一非民青系から選挙で選ばれたのは、前年度の経験から役に立ちそうだと思われたからだったと思います。実際プログラムの編集が自分の仕事でした。今はどうだか知りませんが、もし実行委員会が各学部の学生組織の代表から今も選出されているのだとすると、学生全体の意識をそれなりに反映しているということでしょうから、問題は少し深刻かもしれません。

# by pastandhistories | 2024-03-11 10:43 | Trackback | Comments(1)

何を問うのか

 今朝は横文字を読んでいたけど、頭に入らない。ということで、ネットサーフィン。各大学の入試問題が色々話題になっているようです。東京大学世界史のサイード、これはある程度意図は分かります。しかし、慶応大学商学部日本史の戦後の学生自治会の全国組織の正式の名称を11字で漢字で答えよというのはどうでしょうか。
 実はいくら考えても最初は正解がわからなかった。「全国学生自治会連合」だと9文字にしかならないから。どうも正解は「全日本学生自治会総連合」らしい(発足時は「綜」?「聯」合?)。今時受験生にこの出題をする意図がわからない。せいぜい歴史的知識としては、「全共闘」ではなく、「全学連」だということが分かればいいのではないでしょうか。それがなぜ「正式名称11字」なのか。そのような知識を持っていたからといって、一体どういう意味があるのかなと感じました。
 もう一つ「55年体制」と答えさせる問題もあったようです。以前書いたことがあるけど、これはきわめてイデオロギー的な意味を含んだ言葉です。自民党・社会党の二政党状況を指しているのでしょうが、自民党はともかく社会党は「体制」だったのでしょうか。さらに言えば60年以降は民社党、公明党、共産党がそれぞれ一定の議席を占め既に多党化状況になっていた。そう考えればせいぜい60年代初めまでの「55年政治状況」に過ぎないと考えたほうがよいはずです。自分が採点者なら、「55年状況」という答案を正解とするのですが。

# by pastandhistories | 2024-03-01 10:45 | Trackback | Comments(0)

待ってろ、辰史

 昨日書いたことの補足。藤原辰史講演への大反響。そのほとんどが好意的なもの。「自分も似たようなことを考えていたから」?。でもそれでいいのかな。彼はそうした安易さに刃を突き付けたのではないのかな。だったら、むしろ反論しよう。「待ってろ辰史」という感じで。そのように問題提起をふまえて、論争していくことが一番大事なような気がする。ということで、今日は「待ってろ辰史」と書いておきます。
 でも正直言って彼の力には立ち向かえそうもないな。ある大学を数年前に退職した教師がメールで、西洋史研究者の中堅若手で将来を期待できるのは、○○○I○○○○○○○○○○○Iと○○I○○○○○○○○I○I○○だけだと言っていた。 

# by pastandhistories | 2024-02-27 08:46 | Trackback | Comments(0)

低関心化

 もうすでに知れ渡っているのでしょうが、今日の記事は藤原辰史さんの講演「ドイツ現代史の取り返しのつかない過ち」について。リアルタイムだけで既に数百の反応。歴史研究に関する記事の反応で、これほどまでに大きなものは初めてであったような気がします。これが『朝日新聞』でも、岩波『世界』でもなく、『長周新聞』によって広まったことに、現在の人文学が置かれている状況が反映されている感じがして少し残念です。『長周新聞』をとおして要約にアプローチできるので、ここでは「歴史学そのものが、人間の足跡と尊厳を簡単に消すことができる暴力装置であることへの自覚の希薄さがある。その政治的緊張感のなさは、ドイツ現代史に限った話ではない」という指摘だけを紹介しておきます。現在のヨーロッパ史研究全体にも、そして歴史研究全体にも当てはまる問いです。
 この2年ほどカルチュラル・スタディーズをめぐる研究会に参加していて、次回はエドワード・サイード。ルカーチからアドルノ、そしてフランツ・ファノンを論じた小論が素材なので、関連文献を読んでいます。サイードはともかくかつては広く読まれていたファノンを読み直してみると、藤原さんの言うところの「無関心」というより「低関心」化への流れが著しく進んだなという感じがして、これもまた残念です。

# by pastandhistories | 2024-02-26 09:37 | Trackback | Comments(0)

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