人気ブログランキング | 話題のタグを見る


歴史についてこれまで考えてきたことを書いています


by pastandhistories

ヘイドン・ホワイトの件

 久しぶりのロンドンです。これもネットの影響でしょうが古本屋が大分減ってきたようです。幸いにして毎回訪れているユーストンの近くのJudd Booksとキングズクロスの近くのHousmansはまだありましたが、Housmansのほうは地下一階に大量に置かれていた労働運動史関係の史料や文献はもうほとんど置かれていませんでした。日本で言えば新村書店と無くなったウニタをかねたような本屋だったわけです。これも時代の流れだということなのでしょう。
 ところで日本を出たのはちょうど27日だったので、『思想』の特集「ヘイドンホワイト的問題と歴史学」の発行にぎりぎり間に合いました。ということでこちらにも1冊持ってきました。連絡ミスで『思想』では文献目録に紹介できなくて少し残念でしたが、ホワイトが訪れた立命館からも「報告集」が出され、そのほとんどがネットにあげられていますので、これでホワイトの日本での講演が揃って翻訳・紹介されることになりました。ホワイトの来日の件については、会場では時間の都合もありほとんど説明することができませんでしたが、今回の二つの出版物も含めていくつかのいきさつをここで書いておきます。
 まずホワイトは昨年の来日に当たって事前に今回訳出された文章以外にもいくつかの文章を送ってきて、それを参加希望者に自由に配布してよい、またどの会場でどれを話すのかもこちらが選択してよいと伝えてきました。そこでそれを立命館の吉田寛さんにお伝えしたところ、時間的な問題もあって「ポストモダニムと歴史叙述」を京都でということになり、東京では「実用的な過去」を話すということになりました。
 立命の方は最初は大学院生の授業に力点を置くということだったのですが、やはり開かれた会にしたいということで、会場も当初の予定より広くし、また二部構成というかたちをとることになりました。また企画自体の性格から最初から報告集を出すということで計画が進められました。東洋の方は、レクチャーとセミナーという二日形式になりましたが、この構成には大分苦労しました。その大きな理由は、日程の調整という問題もありましたが、それ以上にやはり個人的な準備ということもあり、そうしたこともふまえて「会場での議論をそのまま公表することはしない、個人個人がそれぞれ成果をその後に個人的に提示していく」ということを約束した上で参加してもらいました。結果的にはホワイトの人柄もあって当日の議論はかなり充実したもので、参加した方の中からも公表しないのはもったいないという意見も出ましたが、あくまでも最初の約束ですので、そうしたかたちの報告集は東洋のほうでは出しません(個人的な文章を書いたものは出す予定です)。
 しかし会での議論が興味深いものであったということで、参加していただいた『思想』の編集者の尽力で、翻訳を含めてかなりの執筆者が当日の参加者や発言者という形で『思想』の今回の特集が編集されたということです。当日の参加者の構成は岡本が中心に進めたのですが、雑誌の編集は編集者の専権事項ですので、『思想』の方で決められたわけで、基本的には別のものです。結果的には東京の会の「報告」という部分もあって、『思想』には感謝しています。同じように感謝したいのは、小田中直樹さんや長谷川貴彦さんといった地方からの参加者です。予算の都合があって、最初は交通費も出せないということだったのですが、参加を本当に即答してくれてかつ十分な準備をして会に臨んでくれました。もちろんそれ以外の人にも今回の件では大変お世話になりました。でもこうしたふうにことが進んだ最大の理由は、ホワイトという人の議論や人柄の魅力だということは会に参加した多くの人が共通して感じたことではと思います。、
by pastandhistories | 2010-07-31 04:34 | Trackback | Comments(0)

カテゴリ

全体
未分類

以前の記事

2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 11月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 06月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 07月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 10月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 01月

フォロー中のブログ

最新のコメント

恐れ入ります。いつも勉強..
by とくはら at 14:37
『思想』の3月号ですか。..
by 川島祐一 at 23:39
先生は、「「民主主義」擁..
by 伊豆川 at 19:57
先生は、「歴史が科学であ..
by 伊豆川 at 17:18
セミナーで配布・訳読され..
by 伊豆川 at 14:44
私も今回のセミナーに参加..
by 伊豆川 at 18:55

メモ帳

最新のトラックバック

ライフログ

検索

タグ

その他のジャンル

ブログパーツ

最新の記事

アームチェアー「パブリックヒ..
at 2024-03-17 21:04
MFSC
at 2024-03-11 10:43
何を問うのか
at 2024-03-01 10:45
待ってろ、辰史
at 2024-02-27 08:46
低関心化
at 2024-02-26 09:37

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧