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社会学と歴史学

 いくつかの大学では文学部の中に社会学科と史学科が今でも置かれています。そうした大学で史学科にとっての問題となっていることは、進学の振り分けのさいに社会学科に優秀な学生が殺到して、史学科には優秀な学生が進学してこないことです。いわるる論壇で活躍する若い社会学者が多いのに対して、そうした場に登場する若い歴史研究者が少ないのは、そのためかもしれません。もっとも多くの歴史研究者は、社会学者の意見は表層的、現象論的なものでしかないとしてそれを軽視する傾向があります。
 しかし、歴史学と社会学の関係という問題についての自分の考え方は、理論的には歴史学よりも社会学のほうが優れたものとなりうる可能性が高いというものです。その根拠は常識的なものです。歴史学でもそのことは問題となりますが、理論の精緻さを根拠づけるものは、その材料として用いられるデータの量と、その正確性です。そう考えれば、取り上げられうるデータと、その確実性という点で、現実に観察可能なデータを基礎とする社会学の方に圧倒的な利点があります。つまり「科学」性という点では歴史学は残念ながら劣位にあります。その意味では歴史研究が理論的であろうとするなら、その一つの有力な方法は、確実な豊富なデータの分析によって根拠づけられた社会学的な理論を、その応用が可能である近過去へと適用していくということです(時代が遠ざかればその適用は、コンテクストもまた異なったものとなるわけですから、理論的にはより不正確なものとならざるをえません)。歴史学が実証を重視するのなら、常識的に導き出される論理的な結論はそうしたものです。その逆に、過去の時代を対象として得られた乏しいデータをもとにして組み立てられた推論を現在の社会の分析に援用するというのは、本当はきわめて非科学的な議論です。
 「実証」は用いることのできるデータの正確性を確認していく歴史研究の基本的要素ですが、そうした作業によって捕捉できる史料は量的には大きな瑕疵がある以上、それは「理論」の正確さを保証するものではありません。このように考えると、歴史の唯一の優位性は理論的厳密性ではなく、対象とする時間的スパンの広がりにあるという議論が生じることになります。多くの歴史研究者が社会学研究者の議論を表層的、現象的論なものとするのはこのためでしょう。
 しかしこうした「時間性」は実証によってよりも、想像的なものによってその多くを支えられています。実証性を根拠としているはずの近代歴史学が、想像的なものを根拠に社会学を批判しうるとするのは、論理的には奇妙なことです。
 
by pastandhistories | 2011-05-25 12:19 | Trackback | Comments(0)
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