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拡大家族

 坂の下の初音町から転居した坂の上の真砂町の家は、かなりの広さがありました。多分300坪くらいあったのではと思います。もっともこれは偶々の話で、当時は東京の多くの家屋は借地権、沢村貞子さんのエッセイにありましたが、土地を買うなどというのは、「縁の下まで買うのかい」と馬鹿にされた時代の話です(今では都心のこれだけの広さの家に住んでいれば大金持ちということになりますが)。
 そもそもこの土地には記憶にあるだけで4軒の家が建っていました(防空壕を含めると5軒)。今考えるともう1軒あったのかもしれませんが、記憶は定かでありません。初音町の階段転落事件のせいか、いずれも平屋。真砂小学校との境に敷地内に木戸口から入る路地があってそこを延々と歩いてさらに左に曲がったその奥に今でいえば2kの建物があって、そこに歌舞伎役者の付き人の家族が住んでいました。男4人と女1人の5人兄弟、家族構成と子供の年齢がほぼわが家と同じで、一緒の家族のような関係。その家と防空壕をを隔てたその前には1kの家、ここには当時50代くらいだったと思いますが、祖父の末弟が中年の女性と同居していました。この祖父の弟は戦前はまったく行方不明で、戦後ひょっこり我が家に現れたという人物。それでもなぜか駐留軍に出入りをしていて、この人が時折持ちよるハーシーの三角チョコのおかげで、自分はgive me chocolateなどという単語は憶えずにすみました。戦前はどこにいて行方不明であったのかは、我が家では語られない謎でした。
 他にもいろいろな人がいました。もちろん祖父母、母親が出産のさいに死んだ祖父母の初孫、父の会社で働いている人、お手伝いさん、さらには中卒で働いていた人の郷里の友人で大学進学して東京に出てきた人、たんなる居候、そうした人々が始終入れ替わるということで、子供心にもよくわからない家族でした。ようするに拡大家族なのですが、戦後の居住条件の悪い時代には、そうした人が同じ敷地に暮らしていたということです。疎開と同じように、必ずしも親族でない人たちがが相互扶助的に暮らしていた時代であったということです。
 結局この真砂町の家にいたのは数年間。父は当時医療器械卸業を経営していましたが、朝鮮戦争特需で売り上げが大きく拡大した(戦争は医療品に対する爆発的な需要を生み出します)にもかかわらずその売り上げ金の回収が滞って、今では想像もつかないような巨大な負債を抱えて昭和27年に倒産。自分にはあまり記憶はないのですが、2歳上の姉の記憶による箪笥や勉強机にまで差し押さえの赤紙を貼られて、この家から転居することになりました。大家族は解体、祖父母は雑司ヶ谷で間借り暮らしとなり、我が家は親子だけの核家族として再出発することになります。膨大であった負債は、その後の経済成長と物価の上昇により次第に相殺されていき、自分が大学2年の時に完済されることになりました。
by pastandhistories | 2011-11-26 10:13 | Trackback | Comments(0)
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