人気ブログランキング | 話題のタグを見る


歴史についてこれまで考えてきたことを書いています


by pastandhistories

歴史の個人化、記憶の共同化①

12時も大幅に過ぎ、明日ではなく今日は3コマ、早く寝た方がいいけど、土曜日の会で言い残したことがどうしても気になるので、このブログを利用して、タイトルのテーマについて、試論的なことを書いてみます。全体を作成してからアップという方がよいでしょうが、すでに枠組みはできているし、あくまでもメモ的なものなので、気に入らなければ消せばいい。むしろ書きながら、考えを整理した方がいいのではということで、書き始めてみます。
 まず基本的なことから。タイトルは「歴史の個人化」が先ですが、記憶の問題から書きます。そのあたりも説明が不十分でしたが、記憶は基本的には身体的記憶と精神的記憶というように分けることもできます。前者は神経回路や脳細胞による作用。19世紀以降はしばしば心理学などをとおして物理的(医学・生物学などを含む)な分析の対象ともされています。後者ももちろん厳密には神経回路や脳細胞の働きによるものですが、同時に社会学や哲学といった人文学的なアプローチの対象にされています(こうした分類をした場合、精神分析学や心理学を人文学に含むかという問題が生じますが)。
 身体の問題は最近では歴史研究の重要なテーマでもあって、そのことを無視すべきではありませんが、基本的には歴史学に関連づけやすいのは後者です。というのは精神的な記憶は記憶の社会性という問題と関連づけやすいからです。会でも話しましたが、精神的記憶においてはある段階からは言語が重要な役割を果たしています。このことは個人的記憶の想起という例をとるともっともよくわかります。記憶の想起は、自己に対して語るときでも、他者に対して語るときでも、言語を基軸とします。だからといって、こうした精神的記憶が言語の習得以前には存在しないのかというと、これは身体的記憶との関係からも難しい問題です。そのことを留保して議論を進めると、精神的記憶は社会的な枠組みが重要な役割を果たします。
 まずは繰り返しますが、言語による想起という問題。言語は他者との共有において初めて機能するものですから、言語を用いること自体が自己の孤絶性へのアンティテーゼ。言語的な想起というのはきわめて社会的な行為です。つまり言語をもちいて想起されることは、たとえモノローグであっても、本来的には社会化されている記憶です。
 それでは社会化された記憶はどのようなかたちで形成されていくかといえば、それは幼児期から取りまく準拠集団によって作られていく、まずは親子、家族、近隣、・・・・ということになります。考えてみれば当たり前のことですが、常識的には個人的なものであるとされがちな記憶のこうした社会性・共同性を指摘したのが社会学者であるアルブバクスの集合記憶論。しばしばこの議論は1925年に形成されたけれど、1970年代~80年代に至るまでは、歴史学との関連においてはそれほど注目されなかったと議論されています。同時に最近では共同記憶論の始まりをアルブバクスに一面化すべきではないとし、ベルグソンやデュルケムなどとの関係を強調する指摘もあります(The Collective Memory Reader,2013,のintroduction).
ここまでで確認しておきたいことは、以上のように記憶の共同性というのは、ある意味では自明の議論であるということ。記憶は、それを所有している人間が死ねば喪失されるという点で自己完結的・個人的なものであっても、その内容自体は基本的には社会的に規定されているという面が少なくないことです。
 一方記憶に対しては共同性・集団的が強調されがちな歴史において、なぜその個人化ということが議論されるようになったのかというと、その一つの理由は、歴史が現在のようなかたちで集団化されたのは、「歴史的には」極めて特異なことであったからです。・・・・・(to be continued)
by pastandhistories | 2013-11-18 01:19 | Trackback | Comments(0)

カテゴリ

全体
未分類

以前の記事

2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 11月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 06月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 07月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 10月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 01月

フォロー中のブログ

最新のコメント

恐れ入ります。いつも勉強..
by とくはら at 14:37
『思想』の3月号ですか。..
by 川島祐一 at 23:39
先生は、「「民主主義」擁..
by 伊豆川 at 19:57
先生は、「歴史が科学であ..
by 伊豆川 at 17:18
セミナーで配布・訳読され..
by 伊豆川 at 14:44
私も今回のセミナーに参加..
by 伊豆川 at 18:55

メモ帳

最新のトラックバック

ライフログ

検索

タグ

その他のジャンル

ブログパーツ

最新の記事

ディジトリー
at 2024-03-28 15:45
アームチェアー「パブリックヒ..
at 2024-03-17 21:04
MFSC
at 2024-03-11 10:43
何を問うのか
at 2024-03-01 10:45
待ってろ、辰史
at 2024-02-27 08:46

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧