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ギャンブルと歴史

 説得力のある議論ができるかわからないけど、予告したので、「ギャンブルと歴史」というテーマで書きます。素材とするのは、おとといのレスター対マンチェスターシティ戦です。なぜこのテーマを取り上げるのかというと、ギャンブルを例にとると、歴史の説明において重要な役割を果たしている因果関係の問題について理解しやすい側面があるからです。
 おとといの試合の直前のオッズが具体的にどうであったかは知りませんが、レスターに関してはここ3戦、つまり実力的には上回るとされるリヴァプール、マンチェスターシティ、そしてアーセナル戦、とくに強豪チームとアウェイで戦うマンチェスターシティ戦とアーセナル戦がプレミア初優勝の鍵であるといわれていました。3連敗する可能性もある。そうなれば、「本来の実力通り」優勝戦線から後退していく契機となるだろうと予想されていました。色々な要素を前提に考察すれば、そうした結果がある程度の蓋然性をもって出現するであろうということです。しかし、結果はまったく異なったものでした。
 「いろいろな要素」、別の言い方をすれば起きるであろう出来事の「原因」とされる諸要素、あるいは変数といってもいいのですが、そうしたものを考え合わせれば、もともとレスターに関しては優勝どころか、クリスマスまで首位に居ることは予想されていませんでした。したがってそうした結果に賭けた人に対しては、既に6000倍以上の配当が支払われています。つまり合理的な前提とされる諸要素・変数を組み合わせても結果は予想できなかった。それが結果を対象としたギャンブルが成立してきた根拠です。いくら合理的だとされる思考を重ね合わせても結果が予想できない。その理由はなぜか。単純に言えば(?)、人間の行為の結果であるスポーツの試合の結果は、きわめて複雑な諸要素・変数が組み合わされて生ずる結果、いわゆる複雑系(?)に属しているからです。
 だとすると、議論を逆転させると起きた結果をその原因となった諸要素に還元して因果的に説明することは、論理的にはけっして正確な説明ではないということになります。そんなことができるなら、諸原因となる要素を見出せば、結果は確実に予想できる、したがってギャンブルの対象とはならなくなってしまうからです。
 実はこの議論には反論があり得ます。つまり、そうはいっても出来事が起きうる確率はある程度予想しうる。というよりも、どの程度の人が、どのような予想をもっとも合理的だと考えたかはオッズの予想順位に反映されている。そして多くの場合結果的にはオッズの予想順位にしたがったかたちで結果は生じているのではないかという主張です。
 多分この主張は正しいでしょう。しかし再びギャンブルに例えると、そうした順当な予想にしたがって投資し続けるのと、今回のレスターの優勝(まだ決まってはいませんが)に賭けるのと、どちらが長いスパンから見た場合最終的な利益をもたらすのか、もし後者だとしたら、予想に基づく行動としては後者の方に合理性があります。再び比喩的に言えば、マイノリティに立つ選択の方が、あるいは特異な思考が、より合理的な決断でありうる可能性があるということです。やや飛躍した議論だとは思いますが、因果関係から歴史を考えるさいには、こうした思考もまた重要かもしれません。
by pastandhistories | 2016-02-09 21:43 | Trackback | Comments(0)
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