歴史についてこれまで考えてきたことを書いています


by pastandhistories

プロフィールを見る
画像一覧

マルクス主義と実存主義

 ヘイドン・ホワイトをヘルマン・ポウルが、社会変革への意思、実存主義からの影響という点から論じていることを紹介しましたが、実はそのことはホワイト自らが語っていることです。今日はそのことが自身によって明確に語られた文章を紹介します。 Literary & History (Spring 1998) に掲載されたキース・ジェンキンズとのインタビューの最初の方の部分です。英文そのままでもいいのですが、簡単に日本語に直しておきます。
「労働者階級として、私はつねにマルクス主義・社会主義の伝統に共鳴していました。デトロイトで私の父は流れ作業で働きました(もともとはテネシーに住んでいてホワイトはそこで生まれたが、大不況で父親が職を求めてデトロイトに移った・・・訳注)。私自身も工場で働きました。私たちは皆労働組合(labor union)の人間でした。しかし、あなたも知っているように、アメリカの労働組合は、イングランドの労働組合のようなものではありませんでした。大学にいた時、私は『ニュー・ステーツマン』を読んでいました。そしてイギリスの社会民主主義の影響を受けていました。しかし、強力な共産党はなかったので、マルクス主義は大学の学問的な世界のなかにおいてだけ影響を保っていました。私にはそう思えたし、今でもそう思っていますが、マルクス主義はそのなかで人々が彼らの意味を見出し、生涯それを貫くまとまった実践として歴史について考えるもっとも重要な試みであったし、いまでもそうしたものとしてとどまりつづけています。このことが弁証法的唯物論の弁証法的側面だと私には思えます。さて、(私の)実存主義的な要素については、これは世代的なことです。私が17歳の時に戦争が終わり、突然カミュとサルトルの著作が合衆国に溢れだしはじめました。このことは、18歳から19歳の学部学生にとっては大きな興奮を引き起こすものでした。この要素は異なったものでした。私は当時哲学に興味がありました。しかし、合衆国の哲学のすべては、論理的実証主義か分析的哲学のどちらかであって、このことは私にはあまりに退屈なものでした。社会的な、道徳的な問題を扱うことはできないと思えました。そこで私は、マルクス主義を実存主義的に解釈することへと向かったのです。あなたも知っているように、私はマルクス主義が社会についての本当の科学を打ち立てたとはけっして考えませんでした。マルクス主義の主要な力は、その労働者階級のために正義への要求、倫理的な社会主義への要求にあると私には思えました。そしてそれゆえ(自らの自身の)選択と責任に強調を置く実存主義が私にアピールしたのです。」
 きわめて明確な説明です。実はこのインタビュー全体をとおしてホワイトは、自分が「大学」などとはほど遠い労働者階級の出身であって、海軍をへて、兵役経験者の優先枠で地方の小さな大学(ウェイン州立大学)に入ることができたこと、このことが自分の立場の基本的な出発点であることを述べています。既に何度か指摘しましたが、こうした出自と世代的経験がホワイトの思考の原点です。およそ「ファシズム」とはほど遠いものです。そのことはこうしたホワイトの思想的出発点からも理解できるはずです。

by pastandhistories | 2016-12-15 22:14 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://tsyokmt.exblog.jp/tb/23477707
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。

カテゴリ

全体
未分類

以前の記事

2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 01月

お気に入りブログ

最新のコメント

先生は、「「民主主義」擁..
by 伊豆川 at 19:57
先生は、「歴史が科学であ..
by 伊豆川 at 17:18
『開かれた歴史へ 脱構築..
by 伊豆川 at 13:28
3月18日の会に参加させ..
by 伊豆川 at 08:33
セミナーで配布・訳読され..
by 伊豆川 at 14:44
先生の議論には、大筋で同..
by 伊豆川 at 17:10
私も今回のセミナーに参加..
by 伊豆川 at 18:55
先生が制度化された「真実..
by 伊豆川 at 00:29
先日、ヘイドン・ホワイト..
by 伊豆川 at 20:53
人間に関心や理解を促す語..
by 伊豆川 at 22:33

メモ帳

最新のトラックバック

「変化する可能性」
from 右近の日々是好日。
プラグマティズム
from 哲学はなぜ間違うのか?

ライフログ

検索

タグ

人気ジャンル

ブログパーツ

最新の記事

ネットの情報管理
at 2017-03-08 16:02
パブリックな場の歴史とのかかわり
at 2017-02-26 09:04
大きな歴史と小さな歴史
at 2017-02-23 09:56
ファミリーヒストリーとグロー..
at 2017-02-16 22:04
ファミリーヒストリーについて..
at 2017-02-13 11:55

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

歴史
哲学・思想

画像一覧