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IFPH⑦

 昨日の午前便で帰国しました。ラヴェンナでは時差の関係で多少対応できないところに会の進行が早く、報告も前後が混乱してしまったようです。量的にも全部を報告できないので、記憶に残っていることをメモ的に記していきます。 
 二日目に関しては、すでに紹介したワーキングループによるパネルディスカッションの前にあった、Getting the Story Sraight: Public History for a Challenging Present という会が、それぞれの報告もまとまっていて参考になりました。タイトル通り、ポストモダニズムの議論への対応を意識したもの。まず司会者(Liz Sevcenko)が基本的問題を提示。現代は post-truth の時代であると位置づけ、その中においては四つの truth が問題であると指摘しました。1. forensic truth, 2. normative truth, 3. dialogical trith, 4. community truth です。そのことを前提として、どのような歴史を作るかがパブリックヒストリーの問題点だということです。報告者は3人。それぞれよかったけど、発言に説得力を感じたのは、この会のもっとも中心的な人物の一人であるセルジュ・ノワレ(European University Institution)です。EUの流れの中で歴史はこれまで abuse されてきたナショナリズムの枠を超えなければいけないということなのですが、だとすると、ではヨーロッパの共同の歴史とかトランスナショナルメモリーというもの、別の言い方ではヨーロッパにおける有用なパブリックヒストリーとは何かということが彼が論じたことです。すでに触れたように、ヨーロッパを単位とした統合的なものであればいいというわけではない。とりわけ近現代史は非ヨーロッパの外因的な要素を考えないでヨーロッパ内でのまとまりだけを考えるなら、それは反省のないものになってしまう。これはナショナルヒストリーにもあった問題です。パブリックな場でのナショナルヒストリーというのは、常識的なものとしてかなりのまとまりをもっています。しかし、その常識にそったまとまりに、大きな問題を生じさせる要素があったわけです。
 セルジュ・ノワレは三日目の午前中にあった Should History Museum Foster Identities? という会の司会もしました。この会は実際の博物館の内容についての若い研究者や博物館員の報告。それぞれヨーロッパの共同博物館のプロジェクト、ドイツとアメリカの現代史関連の博物館の比較、第一次バルカン戦争についての博物館いついて、そして旧ユーゴスラヴィアにおける博物館のあり方についての報告でした。これらの報告を聞いていて一番感じたことは、博物館の展示がとりわけ現代史についての戦争の記憶と関わっていること、別の言い方をすると、ナショナリズムやイデオロギーと深くかかわっていることです。
 博物館には歴史記述よりも直接性という点では優れた面があり、そのことがパブリックヒストリーの重要な要素として今回の会でも議論されていました。しかし、同時に共同記憶の装置化という面が博物館にはに抜きがたくある。そうしたことをどう考えるかが、次以降の記事でまた触れますが、やはり大きな問題だということを、このセッションでも、会全体を通しても感じました。

by pastandhistories | 2017-06-12 15:13 | Trackback | Comments(0)
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