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パブリックヒストリーについてのメモ⑥

IFPH では会の報告内容として、ホームページへのアクセス数の各年ごとの推移の報告がありました。順調な増加傾向があって、今後の可能性を予想させるものでした。実はそこで報告をされたアクセス数の割合にして5分の1くらいのアクセス数が、このブログにはあるかもしれません。IFPHのホームページは、英語で全世界に発信されているわけです。統計の読み取り方の間違いなような気もしますが、それにしてもこの間のこのブログへのアクセス数は、多い感じです。まだあまり聞きなれていないパブリックヒストリーというテーマが、どのように議論されるのかについて、関心をもつ人が多いからだと思います。
 ということなので、少し記録を確認していたら、昨年パブリックヒストリーをめぐる研究会で簡単な講演をすることを依頼され、それにあわせて作成した原稿があることを思い出しました。さっそく確認してみたら、400字原稿用紙40枚程度で、ここでメモ的に書いていることとも重なる点があるようです。量が多すぎてここにアップするのは難しそうなので、それならば以前英文原稿については行っていたように、ホームページを作成してそこにアップしようかなと考え午前中に少しトライしましたが、うまくいきませんでした。また時間を見てトライをします。
 詳しくはその原稿をとおしてでということで、今日はパブリックヒストリーについての最後のメモを記します。IFPHでもさかんに議論された博物館の問題です。「さかんに議論」されたように、博物館をめぐる議論はそれ自体としてすでに十分と議論されていて、また最近では歴史研究者によるアプローチも盛んになっています。自分からは専門外のことであって、あくまでもここでの議論は、パブリックヒストリー論からみた感想的メモとなりますが、今回の会での議論で感じたのは、博物館や記念建造物のイデオロギー性ということです。それが近年は増加する傾向にあるということです。
 もちろんこうした議論は、博物館や記念建造物のナショナルな枠組みとの関係を強調した議論であって、視野を広げれば、博物館や記念建造物は、むしろ数としてはローカルなものが圧倒的に多く、またその内容も多ジャンルにわたっていて、私的な要素を含むものも少なくありません(一例をあげると落合博満記念館。こうした芸能・スポーツはもちろんのこと、その他の文化的ジャンルや郷土史に関わるものなど実に多様な記憶装置が、実際には全国的に散在しています)。したがってその政治性やイデオロギー性を過剰に論じるべきでないことも事実ですが、他方ではエラノ・ゲイ論争、対する原爆記念館、そして今回の会のように、少女(慰安婦)像や共産主義犠牲者博物館、といったものをめぐる議論が絶えず提示されるように、記述される歴史以上に固定化される記憶装置には、それがイデオロギー的な議論の対象となるという面があります。記述が相対性を許容するのに、モノ自体にはそうした側面が少ないからでしょう。
 歴史は確たる証拠にもとづいた事実を表象するものだということは、常識的に論じられています。しかし、確たるものを提示することに、イデオロギーが強く内在するというパラドクスが、歴史にはあります。おそらくはそうした問題をどう考えるかが、「記憶」と「和解」、そして「忘却」をめぐって最近では行われているのだと思います。
 以上いつもながらまとまりませんが、これでパブリックヒストリーに関する記事はひとまず停止いたします。なおこのテーマに関しては、ここで紹介した論者の誰かを招いての招聘セミナーを計画中で、現在その日程の調整をしています。実現できるようでしたら関心のある方は是非参加してください。

by pastandhistories | 2017-06-23 15:43 | Trackback | Comments(0)
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