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new brave history

 先日ある文章に、「ニュー・ブレイヴ・ヒストリー」というサブタイトルをつけたら、編集者の人にわかりにくいと言われました。確かに意味が分かりにくいですね。英文では、New Brave History。 これなら英文の読者にはわかるところがあるのではと思います。ハックスレーの New Brave World (翻訳タイトル『素晴らしき新世界』)をもじったものであることがわかるからです。 
 『素晴らしき新世界』はいわるるディスト―ピア的な科学的空想小説です。テーマは未来には、現在と同じようなかたちでは人類は文化的にも、あるいは生物的にも存在していないというものです。したがって、そうした人類から見た歴史は、現在の人が考えるような歴史とは異なるものとなります。
 人類は未来において現在とどう異なるものとなるのか。その一つの例示はサイボーグです。痛みと感情をめぐる本でも、攻殻機動隊を例にとって、未来人類にとって痛みという感情はどのようなものなのか、どのような意味を持つのかという問題がふれられています。しかし、そこで問題となるのは、痛みや感情を感じる器官である脳は、将来にわたって生物的(有機的)なものにとどまるのか、それとも無機的なものによって置き換えられるのか、さらには無機的なものを有機的なものに転換したものを移植するかたちで脳が合成されていくのかという問題です。
 最近、碁や将棋で人工知能(AI)が職業的棋士を打ち負かす例がさかんに報道されるようになりました。コンピューターのほうが、人間より高い能力を持つということです。歴史研究でもそうした流れは生じています。だとすると問題は、人間がコンピューターをどのように上手に利用するかだというような議論が、よく行われています。果たして問題はそこにとどまるのでしょうか。
 そうした議論は、機械と人間を別のものとして考える、つまり前者を無機的なものとして、後者を有機的なものとして考えるということに根拠を置いています。しかし、機械は本当に有機化できないものでしょうか。今は機械的要素の多い、人工の手足や内臓を有機化することはそれほど難しいことではないかもしれません。しかし、皮肉なことにこのことはあまり必要なことではありません。無機的なもののほうが有機的なものより、持続性などに関して高い性能を持っているからです。同じように人工知能を有機化することができれば。たとえばそうした有機化された知識を人間の脳に嵌め込めば、最強の棋士が生まれることになります。あるいは最高の思想家や歴史家が生まれるかもしれません(あくまでも現在と比較すれば最高という意味ですが)、。
 こうした考えは実際には実現しえない空想なのでしょうか。自分はそうは考えてはいません。そのことは文明が形成されて以来の人間の歴史(わずか3千年程度です)を5百年程度ごとに区切って考えるとわかるところがあります。紀元0年から見れば紀元5百年位起きていたことはまったく想像のつかなかったことでした。紀元5百年から千年、千年から千五百年、千五百年から二千年についても、同じことが言えるでしょう。そう考えれば、五百年後の世界は現在とはまったく異なる、想像力の及ばない世界である可能性はきわめて高いということになります。それが「歴史」から得ることができる合理的な判断です。及ばない想像力をあえて働かせて想像すると、AIがもつ膨大な情報を有機化して自らの脳内に取り入れた人間が生きている時代かもしれません。そうした人間が考える歴史は、現在の人間が考える歴史とはまったく異なったものでしょう。
 New Brave History というのは、そうした時代における歴史のことです。現代の社会に生きる私たちから見れば、「奇想天外」な話ですか。

by pastandhistories | 2017-06-25 13:57 | Trackback | Comments(0)
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