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by pastandhistories

比較史②

 昨日は少し落ち着いたけど、相変わらずアクセス数は減らず、先週は一日平均が3ケタ。随分と多くの人がアクセスしてくれるようです。そうした期待に応えるほどのことは書けませんがませんが、今日は一回で中断した比較史の続きを書きます。
 ①で書いたことは、ユルゲン・コッカも指摘している「比較史の非対称性」という問題です。歴史家は自らが現前する時間的な、空間的な場に対する認識を前提に過去を論じる。同時にその論じられた過去が提示される場もまた彼が現前する時間的な、空間的な場です。そうした彼が現前する場に対する知識は、歴史家が議論の対象としている過去についての知識と比較すると、質的にも量的にも非対称的なものです。もちろんオーディアンスは、歴史家以上に非対称的な知識しか持っていません。
 逆説的なことですが、そうした非対称性のうえに、比較史は成り立っているという部分があります。しかし、比較史には歴史家の拠って立つ時間的な、空間的な場をともに離れた二つの対象を設定するという方法もあります。たとえば19世紀の南米と、13世紀の中東との比較というようなテーマ。もちろんそうしたテーマでも同一性と差異は論じられますし、歴史家から見れば対象はともに自己に疎遠であり、知識の質も量も似たようなであるという点でパラレルなものとなります。実はこの場合でも、歴史家の問題意識が前提とされていて、その意味では非対称性は内在していますが、外見的には比較される対象そのものは対称性を留保していることになります。しかしこの場合は、テーマの随意性がかなり高まることになります。
 比較史の問題は、結論が前提的に措定されがちだということです。結論は二つ、もしくはも三つ。比較するものに、①同一性あるいは類似性がある。②差異がある。そして③同一性・類似性もあるが、差異もある、という結論です。それほど単純ではないという批判があるでしょう。検討の結果、当初の措定とは異なる結論が導き出される場合も多いという議論の仕方です。しかし、そうした議論もまた、最初の予測とは異って、「意外にも」同一性があるとか、差異があるという議論をしているわけで、やはり結論は前提的な措定から導き出されたものです。

by pastandhistories | 2017-07-25 10:18 | Trackback | Comments(0)

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