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政治の逆説的転回

 ある時期からやたらに研究領域の自己規定を求められるようになりました。結構面倒くさいけど、自分の場合はイギリス史・歴史理論あるいは政治史だけで済ましていましたが、次第にグローバリゼーション論が入るようになりました。さらに細かく求められる時には、社会運動史、議会制度史、グローバルヒストリーと記したりしています。
 というように、自分の本来的専攻は議会改革を求めた民衆運動の歴史。したがって政治理論の本は随分と読みました。可能なら、とりわけ退職後はそうしたことについて書きたいとは思っていたのですが、残念ながら歴史理論関係の注文が先行していてしまい、なかなかそこには手が回りません。このブログもタイトルは「歴史の諸問題」。でも基本的には自分が関心を持つ続けていることの一つは、政治の理論的分析(そして実際的な改善)です。
 そこで今日は現在の政治状況についてコメントしておきます。昨日今日の最大の問題は、民進党からのリベラル派の離脱。簡潔に言えば保守・保守・革新[あるいはリベラル)の三極体制が、少なくとも今回の選挙では成立したということです。この問題について、一部には民進党の分裂は安倍政権に利するという報道・分析がありますが、これは虚偽です。むしろすでにとられた世論調査が示すように、安倍首相の支持率は再び後退しました。
 なぜこのようなことが起きるのか。それは1960年代以降の日本政治を考えるとわかります。1960年代以降の日本に生じたのは野党の多党化現象です。民社党の形成、公明党の成長、共産党の支持拡大、中選挙区制度のせいもあって、このことは加速化され、ついには自民党の過半数割れという現象が生じました。実はこの時この現象を引き起こしたのは、中道保守としての新自由クラブの結成です。しかしこののち進行したのは、新しい補完的な保守政党の形成です。小池都知事や前原議員が参加していた日本新党、小沢議員が率いた新進党、後は限りがないのですが、みんなの党、維新など多くの新しい保守党が出現したわけです。しかし、そのことによって起きたのは自民党の衰退ではなかった。逆に社会党、社会民主党の後退に象徴される革新政党の衰退です。さらにもう一つの現象が同時に進行します。それはかつての自民党の指導者であった長老たちが嘆いているような、自民党の超保守化です。その象徴が安倍首相です。
 なぜそのような現象が起きたのか。それは保守の分極化が逆に中間層を引き寄せ、自民党のさらなる保守化を可能にする働きをしたからです。政治の逆説です。このように考えれば、今回の民進党の分裂は、実際にはきわめて保守的な内容の政党の出現ですが、形式的には反自民党という選択肢を拡大したという点で、安倍首相への支持をさらに下げる役割を果たすはずです。そのままでは安倍首相が退陣する可能性が生じたとはいえ日本政治の危機はさらに進行する可能性もあったわけですが、リベラルな部分が新党を立ち上げ第3極への流れを作ったことによって、補完的保守政党の形成による政治全体の保守化というこれまでの動きとは異なる現象が起きるかもしれません。政治学的に見ると、政治はしばしばそうした逆説的な転回を示すことがあります。

by pastandhistories | 2017-10-02 18:26 | Trackback | Comments(0)
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