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constructedness

 そろそろ師走ということで、卒論の指導(今年は27人も卒業予定者がいます。もっとも世間の流れとは逆に8~9割の就職が内定していて、卒業に意欲的なので助かりますが)、年末の書類提出、あるいは予算処理、さらには研究会・忘年会と時間に追われ始め、あまり落ち着いて仕事ができないのは例年通りです。
 幸いにしていくつかの文章は書き終えていますが、その一つであるStoria della Storiografiaの原稿に関して、編集者から最終的な原稿点検についての問い合わせがありました。内容は「文中で使用されているconstructednessという単語はOEDには掲載されていないので、使用を再検討してくれないか」というものです。読みやすいということが大事ですから、さっそく指示にしたがってその部分を書き直して送ったところ、すぐにまた折り返しのメールがあり、今度は「Googleで点検したら理論的な文献では既に頻用されている言葉なのでそのままでかまわない」ということを伝えてきました。 
 OEDなどよりGoogleやYahooの検索機能やウェブ空間で作成されるようになっている辞書の方が、すでに「生きた」現実を反映するようになっている一つの例です。このことで思い出すのは、『グローバリゼーションと世界社会』という本を1997年に訳出した時の思い出です。自分としてはカタカナ語の使用は避けたいと思い、最初の原稿ではすべて「地球化」と訳したのですが(中国では現在は全球化と訳されています)、おそらく流れとしては日本の社会のあり方としてグローバリゼーションのほうが一般化するだろうと考え、結局は最後にはグローバリゼーションという訳語を採用しました。このとき念のためにいくつかの辞書を確認しましたが、印象的だったのは出版当時は斬新といわれたランダムハウスの大英和の1979年版には、globalizationという項目自体がなく、また研究社の大英和の1985年版には掲載されてはいましたが、globalizeの派生語としてのみ記されていただけで、日本語訳は添えられてはいなかったということです。どちらにもglobalityという言葉は掲載されていませんでした。
 今手元に最新の活字的辞書がないので正確には断言できませんが、globalityは今でも辞書にないかもしれません。アルクの英辞郎でも見出し語とはなっていませんが、Weblio(Wikitionary)にはあります。またこの言葉はYahooで検索すると10万以上の使用例があります。constructedness は、英辞郎でもWikitionaryでもまだ見出し語とはなっていませんが、Yahooでは3万以上がヒットしてかなり使用が一般化していることがわかります。Storia della Storiografiaの編集者の最終的な判断の根拠もそうしたことにあったのだと思います。
 このブログや国際歴史学会議でキーワードとして多用したcommonizationという言葉も、活字・ウェブの双方の辞書でまだ見出し語にはなっていないかもしれませんが、これもYahooで検索すると1万以上の使用例がありますし、それほど理解しにくい言葉ではないのではないかと思います。これに対してdecommonizationという言葉は、もちろんcommonizationに対して「脱共同化」という意味で用いているわけで、これもまた日本語的にも、英語的にもそれほどわかりにくい言葉ではないと思いますが、Yahooで検索しても使用例はわずか5例で、そのうちの4つは自分で、2008年に他の使用例が一件だけあるようです。実を言うと、この言葉を自分の文章を読んだことのある研究者が国際歴史学会議の応答で使用していました(6例目?)。言葉を「新しげに」「権威をもって」振りかざすということは、自分にとってもっとも嫌悪することの一つですが、こうした言葉によって示される意味内容がとりわけ歴史認識の中で問題とされてこなかったことへの疑問が自分の中にはあることが、結果的には「新しい」言葉を用いた理由です。al historyとかizationという言葉も、そうしたものとして「造語」しました。
 いずれにせよ辞書に忠実であることも大事かもしれませんが、言葉は生きたものですし、言葉を生きたものとして豊かにかつ批判的に使用していくことは、それ以上に大事なことだと思います。
by pastandhistories | 2010-11-28 09:15 | Trackback | Comments(0)

読み方

 前回の記事を書いてから一週間たちました。今週も驚かされたことは歴史理論についての文章を書くのを中断してから3週間も経つのに、このブログへのアクセスが前の週を大きく上回り、その前の週とほぼ同じ数であったということです。どうしてそんなことが起きるのよくわからないのですが、口コミや、あるいはこれも信じられないことですが、YAHOOで「歴史の諸問題」で検索するとトップに登場することにその理由があるのかも知れません。ということは、初めて訪問してくれる人も多いということでしょう。もし内容に関心をもっていただけるなら、全体の右上に「以前の記事」とい欄があるので、そこを8月からクリックして、10月までを過去から順番に(あるいは関心を持った部分だけ)読んでもらのうのが、内容を一番理解しやすい方法かもしれません。もっとも過去は遡行的に認識していってもよいというのが、書いてきたことの基本的な内容の一つなのですが。
 中断しているにもかかわらず予想外のアクセスがあるので、それならまた書き始めようという気持ちがないわけでもありません。しかし現状を言うと、中断の理由として書いたように、書かなければならないいくつかの原稿があることと、同時に「読む」ことが面白くなって、ここにきちんとしたことを書くのは時間的に少し難しそうです。小さい文章としては国際歴史学会議の報告は書きあげて、今はここでも少し書いてきましたが、「文字以外の史料と、パブリック・スペースにおける歴史」というようなテーマの論文の準備を、1月10日締め切りに合わせてしています。これは結構難しい部分があるような感じで、間に合うかが心配です。
 これとは別に、A.L.Macfie, ed., The Philosophy of History, Palgrave, 2006 が入手できたので読んでいます。この本は以前ジェンキンズの「歴史を考えなおす」を翻訳した時に訳者解説で紹介しましたが、2000年から2006年までロンドン大学で行われていたセミナーでの報告の中から一部を選んで編集されたものです。自分は半年ほどの参加でしたが、その後も長期にわたって継続されていたものです。参加者は基本的には10人前後、エヴァンズなどが報告した時は30~40人いました。ホワイトなどを招いたプロジェクトはこれにヒントを得たもので、自分としてはとても懐かしいものです。編集はかなり大胆で若い研究者の原稿を掲載する一方で、発表をした著名な人のペーパーはジェンキンズなど以外のものは逆に省かれているようです。そのあたりの理由はよくわかりません。
 そうした本の内容なども含めて週一度土日に更新しながら、時間的余裕ができるようになったら、まとまったことをきちんと続けて書けるような機会があればと考えています。 
by pastandhistories | 2010-11-21 11:01 | Trackback | Comments(0)

ナショナルヒストリーと国語の形成

 少しまとまった仕事がしたいということと、きりがよいのではということで8月から3ヶ月間毎日書いてきたこのブログは中断しました。にもかかわらず中断後もアクセスが続いてその数が3桁を大きく上回りました。正直言って自分ではこれほどのアクセスが続くとは思っていませんでしたが、自分の書いたことが多少でも参考になるのなら、それは嬉しいことです。少し書き続けたいという気持ちもないわけではありませんが、やはり書くのならきちんとした理論的な問題を提示するものとして継続させていきたいので、当面の仕事が終わるまでは中断します。しかし、アクセスもあるようなので、完全に中断はせずに(最初はその予定でしたが)一週間に一度程度、基本的には週末に参考になるような「情報」的なことをしばらくは書いていきます。
ということで、今日は先週も書いた12月11日のプロジェクトのセミナーについてとなりますが、その内容が
 全体テーマ 「ナショナルヒストリーと国語の形成」
  司会 岡本充弘
  報告 渡辺賢一郎「ナショナルヒストリーと国語の形成についての考察」
     下田啓「方言の発見:明治期の会津地方を中心に」                           酒井直樹「翻訳の比喩論と国体-国語という理念と共同体」
というように決定しました。会場は東洋大学白山校舎6号館2階6208教室、時間は12月11日(土)1時半からです。
渡辺さんはロシアタタールの言語統一問題をガスプリンスキーを中心にしている人ですし、下田さん(ヴァッサー大学)、酒井さん(コーネル大学)はいずれもバイリンガルな人たちでアメリカの大学でこうしたテーマを研究しているわけで、メンバーについても議論の内容についてもかなり期待できるのではと思います。来週ポスターを作りますが、問い合わせがあるようでしたら岡本までご連絡ください。
by pastandhistories | 2010-11-14 08:12 | Trackback | Comments(0)

12月11日

 私的なことですが、今日は誕生日です。日記ですから自分の誕生日のことを書いてもいいのかもしれませんが、このブログは基本的には歴史理論について参考になるようなことを、というコンセプトで書いてきました。少し他の原稿の仕事ができて、内容を水増しして書いていきたくはないということが中断の理由ですが、今日アクセスしたら中断後も予想をはるかにこえたヒット数になっていてびっくりしました。誰もアクセスしないと思っていたのですが。
 基本的にはきちんとまた書けるような余裕ができるまでは中断するつもりですが、それまではな何か連絡したいということができたら、書き入れるかもしれません。ということで今日はいくつかのことを記すと、例年行っているプロジェクトセミナーの今年の最終的な予定がほぼ固まりました。酒井直樹さん(コーネル大学)が12月11日(土)に来てくれます。他の何人かが加わって、「ナショナルヒストリーと国語の形成」(仮題)というようなテーマで行う予定で、今週最終的な内容をつめます。それから国際歴史学会議についての原稿は、この一週間が大学祭だったので、その間にほぼそのアウトラインを書き終えました。400字30枚ほどのものですが、それなりに問題提起を書けたのはではと思います。出るのは来年4月のようです。
 午後は史学会に行きます。本当に時々しか参加しませんが、今年は面白そうな発表があるので聞きに行くつもりです。
 
by pastandhistories | 2010-11-07 07:15 | Trackback | Comments(0)

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