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歴史研究の根拠(?)としてのモノグラフ

 昨日は文化史をめぐる研究会があり、それに参加しました。その打ち上げの会でも言いましたが、「老後の楽しみ」はブログへのアクセス数を確認すること。なのですが、実は昨日はここ数か月で最低の数を記録してしまいました。今までは大晦日が最低の日で、「紅白歌合戦の偉大さ」(そればかりではないでしょうが)に妙に感心させられていましたが、もちろんアクセスが減ったのは、新しい記事を書かなくなったからでしょう。
 繁忙期と論文集(「戦後歴史学と『社会運動史』」をめぐる論文集は、正式にタイトルが『歴史として、記憶として―「社会運動史」1970年~1985年」とすることになりました)のほぼ最終的な点検の仕事があったこともありますが、もう一つの理由は、以前の記事を読み返すと、既に書いたこと以上や以外のことを書くのは、かなり難しいということがあります。その意味ではこのブログは事前に遡って読んだ方が、多少は参考やヒントになることがあるような気がします。もっとも自分もそうですが、他の人の書いたブログというのは、それを遡って読むのはかなり難しいことがあります。そこまで他人の雑感にかかずりあうほど暇はないということです。それでも前の記事を読んでみようかなと思ったときは、このブログは繰り返しますが、最初の方の記事から読むのがよいでしょう。
 他人からの関心といえば、昨日の研究会ではかなり極端な主張をしてしまいました。発言をする気はなくずっと座っていたのですが、司会が若い人の発言を繰り返して求めたのにもかかわら参加者の発言がなく、終了近くになって発言を求められたからです。発言の要旨は、「歴史研究者はモノグラフを自らが書いているということを根拠に、(モノグラフを書いていない史学史研究者や歴史理論研究者からの)批判を無視してはならない」というものです。その根拠として例に挙げたのは、多くの研究者の生業を根拠づけている大学での歴史教育、とくに卒業論文という例です。
 そのことを昨日は書いた人とレフリーしか読まない、モノグラフの代表的な例としてあげました。歴史研究者は「歴史」を教えることを、自らの存在の根拠としています。そして大学での専門的な歴史教育の柱となっているのは、卒業論文です。しかし、その卒業論文は基本的には、書いた本人と審査者である教員しか読みません。しかし、書くということは、このブログもそうですが、本来は広がりのある行為です。歴史もまた本当はきわめて広がりのあるものです。だからこそ、歴史研究者は生涯それに取組み、その広がりを基本的には大学で学生に伝えようとしているわけです。それが「書いた本人と審査者である教員しか読まない」ものに矮小化されていて、そのことにあまり疑問がもたれていない、それでよいのでしょうか。自分が学生に常に伝えていることは、卒論であっても最低読み手を30人くらいはイメージしてほしい、そうした読者に対して自分が1年かけて書いたことの面白さを伝えて、読者からの共感を生み出せるような、そうしたものとして論文は書くべきだということです。
 実はこのことはモノグラフのさらなる代表的な事例である現在の修士論文や博士論文の現在の書かれ方、そしてさらには専門的地位を得た研究者が書いている論文への批判を含意するかたちで指摘しました。そうしたものもまた、最近では書いた本人とレフリーしか読まないという傾向を強めています。
 もちろんこうした批判には反論があります。厳密なピアレヴューをへることによって、モノグラフィカルな研究は、個々の研究領域における研究として累積され、長期的な学問の発展に寄与しているという主張です(ここからは卒業論文はもちろんこと、多くの修士論文も除外され、「学会史」に審査のうえ掲載されたものだけが、市民権を得ることになります。逆に大学の史学科で歴史を学んだ学生たちは、せっかく授業料を支払って歴史を勉強したにもかかわらず、「歴史学」の世界での市民権は得られずに、「一般」社会へと放逐されてしまいます)。
 こうしたディシプリンの存在が、「学問」の重要な要素であることは確かでしょう。 しかし卒業論文というモノグラフを一つの例にとると、そうしたディシプリンを支える論拠とそれへの依存が、歴史を豊かなものにしているのかということへの疑問を生み出せるのではということが、自分があえて「モノグラフを書いている」ということを論拠に、現在の歴史研究に対する批判に対して自らを閉じてはいけないと論じたことの理由です。
by pastandhistories | 2013-02-24 11:06 | Trackback | Comments(0)

これから

 本(『開かれた歴史へ―脱構築のかなたにあるもの』(御茶の水書房)が出たようなので、予定通り近刊予告は消しました。自分のところにも送られてきました。もちろん不十分なところも多いけど、内容的には納得しています。現在の「日本」の歴史研究について思うことを、自分の書きたい形で書けたという感じがあるからです。このブログもそうした意味でかなり自由に書いています。いつでも修正したり、消去できるというのはブログの便利なところです。
 本はそうはいきません。一番最後に書き足した最初のページに「についての」と入れるべきところが抜けていることに気づきました。元々は個別的な論文のタイトルに使用した本のタイトルにかかわる説明の部分です。論文を書いた時にもやや「ブローデル」の「流用」ではないかという気持ちがあって、そのことに頭が行き過ぎていてミスをしてしまいました。全体の内容とはそれほど関わらないのが救いですが、残念です。
 自分としてはそれなりに問題提起をできたという感じがありますが、日本での歴史研究という広い意味で枠づけると、単なる出発点に過ぎないという感じです。このブログと合わせて、これからの歴史研究のヒントとして利用してもらえればと考えています。
by pastandhistories | 2013-02-02 08:39 | Trackback | Comments(0)

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