歴史についてこれまで考えてきたことを書いています


by pastandhistories

プロフィールを見る
画像一覧

<   2014年 11月 ( 2 )   > この月の画像一覧

新着

 12月が間近かになるといよいよ本当の繁忙期。平日にも会合が入り始めます。大学も色々な残務整理。今年はそれほど多くはないけど、卒論指導も最終段階になります。予算の処理もということで、この間大分新着書が入りました。でももう置くところがない。というところに事情が生じて、仕事場の引っ越しを月末までにすることになりました。連休はその準備。少し片づけをしましたが、書きかけの原稿(メモではなく、ワープロに打ち込んだもの)がなんと海外旅行用の大型カバンにぴったり入るくらいの量。さすがにびっくりしました。何とか整理しなければと思います。
 そんな状況ですが、この間進行させていた翻訳がやっと今日で一段落しました。明日からはやっと別の仕事を始められそうです。ということで今日は簡単なことを書きますが、この間入手した本でやはり一番おもしろかったのは、ヘイドン・ホワイトの新著、The Practical Past です。題名からもわかるように、『思想』に掲載された論文を中心とした論文集。もう一本『思想』に訳出されたものが所収されていて、全体で5本。来日の前後に書かれたものが集められています。
 簡単に内容を紹介すると、
we should stress the differences among narration (the enonciation, the utterrance), narrative (the enonce, what is said), and narrativization ( the arrangement of what is said in the form of story). Narration has to do with the voice, the tone, and mode of utterance, mode being understood as presumed degree of mastery of the matters dealt with and the degree of authority presumed in the relation of the speaker to an intended audience. The product of the speaking process we call a narrative, the essence of which is also modal inasmuch as the narrative presume a specific kind of relation to what is spoken about or the referent of the discourse. Finally, narrativization is the product of the mode of emplotment used by the narrator to endow the events chosen for presentation with a value of a specific kind - cognitive,moral, ideological, religious, and so forth.The endowment of the referent with the form of a story and moreover a story of a particular kind , genre, or species by means of emplotment produces the meaning-effect of the presentation.(p.94)
というように、narration, narrative, narrativization の概念規定がされていて便利です(historial, historiology, historiosophy, historiogony, historionomy といった用語の規定についても109頁で説明されています。なお一番最初のhistorial は、初出の Difference (2007) でもこのスペルでした)。
 この本はホワイトの現在的な到達点を理解するためには、簡潔に編集されてる点でも便利です。なおホワイトに関しては、カーレ・ピハライネンが編集した Storia della Storiografia の特集号がが来年出るはずです。
by pastandhistories | 2014-11-23 22:37 | Trackback | Comments(0)

民主主義への憎悪

 朝はまだ雨が残っていたけど、典型的な小春日和。この言葉は好きですね。穏やかな暖かさで、ひょっとすると今年は冬は来ないかもしれないという期待すら抱かせる。もともとは今頃を指すのでしょうが、自分がこの言葉を一番感じるのは、正月過ぎた頃の暖かい日。祖母が老衰で1月に亡くなった時、暖かい日が続いて、これが続けば、ひょっとすると今年の冬はやり過ごせるのではと期待したけど、やはり寒い日が来て亡くなった、そんなことををこの言葉は思い出させます。
 本当にしばらくブログを書きませんでした。休みが続いた時にいつも書くけど、別に健康を害していたわけではありません。授業の休講はゼロ。加えて言うと、別に躁鬱的な気質があるわけでもありません。ブログを集中的に書いたり、長く休むと気になるのは、人から躁鬱的な人間ではないかと思われること。確かに原稿を書くときには、そうしたリズムは生じるけど、別に性質的にはそういうタイプではありません。大きな理由は、翻訳に時間をとられていたためです。忙しくてまとまった時間が取れないと、考えなくていいし、新しい本を読まなくていいということもあって、一番やりやすいのは翻訳。しかし、意外と時間を使う。そのためにますます自分の仕事ができなくなる。そうした経験は多くの人にあると思います。
 最近本当に思うことは、タイトルにある「民主主義への憎悪」ということです。一度紹介したと思いますがランシエールに『民主主義の憎悪』という本があります(ホワイトの小文が付されています)。そのなかでランシエールの主張していることは、抽選制への憎悪という問題。多くの「民主主義の擁護者」にとっても、この議論はラディカルなものです。やはり能力の差はあるし、最低でも選挙制のようなものは必要だと考えがちだからです。
 でも能力の差という議論が、選抜制を根拠とした権力形成の根拠であることは否定できない事実。それが官僚的支配の根拠であり、そのことによって権力を保持した人間が、民主主義的な手続きを排斥しようとする根拠となっていることも否定できません。
 さらには選挙の問題はもっと民主主義にとって深刻な問題です。そのことは現在の日本の政治に鮮やかに示されています。民主主義的な手続きによって選出されたと称する人間が、民主主義をもっとも嫌悪し、それを抑圧しようとする。しかし、これは現在の日本の現在に特有の問題ではなく、19世紀以降の政治に現れた深刻な問題。民主主義を憎悪するがゆえに、多くの権力を志向する人間が「民主主義」を利用した。民主主義を憎悪するがゆえに、民主主義を媒体として「政治家」という権力的地位に上昇していくというパラドクスです。そしてそのことを根拠として民主主義を徹底的に抑圧していく。
 こうした憎悪の中で、大学の在り方も大きく変えられていようとしています。大学にそうした憎悪に同調する人間が増えているのは、本当に残念なことです。というより許しがたいことです。
by pastandhistories | 2014-11-06 10:52 | Trackback | Comments(0)

カテゴリ

全体
未分類

以前の記事

2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 01月

フォロー中のブログ

最新のコメント

先生は、「「民主主義」擁..
by 伊豆川 at 19:57
先生は、「歴史が科学であ..
by 伊豆川 at 17:18
『開かれた歴史へ 脱構築..
by 伊豆川 at 13:28
3月18日の会に参加させ..
by 伊豆川 at 08:33
セミナーで配布・訳読され..
by 伊豆川 at 14:44
先生の議論には、大筋で同..
by 伊豆川 at 17:10
私も今回のセミナーに参加..
by 伊豆川 at 18:55
先生が制度化された「真実..
by 伊豆川 at 00:29
先日、ヘイドン・ホワイト..
by 伊豆川 at 20:53
人間に関心や理解を促す語..
by 伊豆川 at 22:33

メモ帳

最新のトラックバック

「変化する可能性」
from 右近の日々是好日。
プラグマティズム
from 哲学はなぜ間違うのか?

ライフログ

検索

タグ

その他のジャンル

ブログパーツ

最新の記事

19世紀的な形式
at 2017-10-10 09:43
歴史の一部
at 2017-10-09 21:54
昨日について
at 2017-10-08 10:45
10月7日
at 2017-10-04 06:27
政治の逆説的転回
at 2017-10-02 18:26

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

歴史
哲学・思想

画像一覧