歴史についてこれまで考えてきたことを書いています


by pastandhistories

プロフィールを見る
画像一覧

<   2015年 06月 ( 6 )   > この月の画像一覧

過去認識とその媒体

 IAMHISTから昨夜帰国しました。学期中ということでいつもながらの強行軍。乗り継ぎがあって、さらに飛行場からは遠い大学町ということで不安があったのですが案の上。まずは乗換え便のキャンセル。飛行場に着いてもなかなかシャトルバスが来ない。帰りにわかったのですが、2時間に1本でした。・・アメリカ地方バス乗換の旅というのをテレビ局に売り込もうと思います。やらせでなければ、出演者は途中何度も野宿することになるでしょう)。帰りも飛行機に乗り終わっているのに直前に機体不良で、出発ゲートに逆戻り。結局ホテルを出てから24時間をはるかに超えて自宅にたどり着きました。
 というように旅行としてはトラブル続きでしたが、内容的には以前から関心があったことなので、収穫はありました。それなりにわかったことが、フィルムスタディーズやメディアスタディーズの状況。記憶と歴史という問題とともに、歴史がどのような「媒体」によって伝えられているか、逆に媒体が歴史認識の形成にどのような役割を果たしているかという問題設定を軸として、パブリックプレースにおける歴史、とりわけサブカルチャーを媒体とした歴史を考えていくことは、今後の歴史研究にとって重要な課題だと自分は考えているので、今回参加した経験は役に立つはずです。2年後はパリで開催されるようなので、日本の映画、テレビ、アニメ・漫画で歴史がどのように描かれているかを紹介するだけでなく、きちんとした理論分析のあるセッションを企画するのもいいのではないかと思いました。関心のある人は連絡してください。
 それから7月11日~12日の会に関しては、今日あたりからポスターを発送し始めるようです。関心のある方は参加してください。書かないと閲覧が増えるという奇妙なブログでしたが、さすがに最近減少気味だと思っていたらこの何日は急速に増加。ついでに11日、12日の会を早めに宣伝しておきます。
by pastandhistories | 2015-06-23 09:42 | Trackback | Comments(0)

TAMHIST(4)

IAMHISTは今日が最終日。朝の全体会議はGary Edgerton (BUTLER uNIVERSITY)という人の講演。この人は以前紹介したイスタンブールの国際文化史学会の時に日本映画を例にとって鋭い質問をした人と顔が似ていたので、昨日そのことを質問したら「自分はイスタンブールには行っていない。自分のことを知らないのか」という顔をされた人。紹介を聞いてよくわかったけど、メディア研究、とりわけテレビ史研究者としては、トップの地位にある人のようです。
 話の内容は『ザ・ソプラノズ』がテレビに与えた影響というもの。この番組も全く見ていない。WOWWOWで放送していたけど、自分は大河ドラマも、韓流も、もちろん「米流」も見ていないので、話が伝わらないところがありました。内容的にはテレビと映画のコンヴァージョンがどのような形で生じたかとか、テレビのトランスナショナル化ということがテーマ。もちろん同じテーマは、『紋次郎』『赤い疑惑』などの「大映映画」制作のテレビ番組に代表されるように、あるいは『おしん』とかアニメ文化の国際化のように、日本にもあったわけで、そのあたりの比較研究の段階がEdgerton の話ではまったく分からず、残念なところがありました。この話もそうだけど、すでに紹介したように研究者は全世界に散っていますが、映画にしてもテレビにしても、一部を除けばヨーロッパ中心的、さらにはハリウッド中心的で、そのあたりがメディアスタディーズやフィルムスタディーズの今後の問題なのでしょう。
 午後は食事を挟んでツアー。ジョン・フォードの資料を見に行くとのことで行きたい気持ちもありましたが、その時間は発表の準備。それから二つセッションに出ました。一つは、Fascist Film Culture in the 1930s というテーマ。最近は学生の卒論にもよくあります。さすがにこのテーマだと内容は細かくなっていて、Christelle la Faucheur (University of Texas) が取り上げたのは、小説家が戦争期にはナチスに協力的な脚本執筆をしたという問題。Kirby Pingle (Loyola University) はムッソリーニが映画製作に関心を示し、アメリカを訪れたことを紹介しました(あまりよく知らなかったことなので、自分の聞き違いかもしれません)。加えて彼が取り上げたのは、ハリウッドでどのようなイタリア系俳優が戦争期には活躍していたかということです。例として挙げられたのは、Gino Corrado という俳優。英語に訛りがあって、回ってくる配役はウェイターという役回りが多かった俳優のようです。『カサブランカ』『風と共に去りぬ』にも出ていたようで、Pingle によれば1000本近くの出演作(少しオーバーな気がしますが)のあるバイプレーヤーということです。早川雪州のような俳優だったということでしょうか。
 最後が自分の報告のセッション。パラレルセッションが四つあって一つはジェイムズ・ボンド論。後は映像表現と音楽の関係論、メディア文書論。こうした学会の常で自分の発表が終わると帰ってしまうので、昨日あたりからどんどん参加者が減っていて、Then, there will be none  になるのではとある意味ではほっとしていたのですが、結構な数の人が集まりました。終了後に運営委員会があるということで残っていた人もいたようです。
 自分の発表内容はいずれ書く機会もあると思いますが、歴史のヴィジュアル化やデジタル化に伴う問題点を指摘したものです。実際には参加者のほとんどはmedia studies や film studies の人ですから反論が出て、擁護する人との間でフロア同士で議論が行われはじめ、司会が止めに入りました。後の二人は、司会も兼ねたAsta Zelenkauskaite (Drexel University)・・名前からもわかるかもしれませんが、世界で一番名前がややこしい(ギリシアもややこしいけど)リトアニア出身の人です・・がBBCを例に放送がオーディアンスヲをどのように組み入れたかをBBCを例に論じました。もう一人は、 Lar Weckbecker (Zayed University) 。ニュージーランドの出身のようですが、現在はアブダビにいます。この人は、ドキュメンタリーフィルムという言葉がいつから使用されたか(答えは第一次大戦期です)を前提に、ローゼンストーンの考えを取り入れ、それに対してmonumentary film という言葉を対比的に使用することを主張しました。それぞれ一定のレベルにあって、自分としてはこの二人と組めたのはラッキーでした。
by pastandhistories | 2015-06-21 13:06 | Trackback | Comments(0)

IAMHIST(3)

時差の関係で日本では同じ日として扱われるかもしれないけれど、こちらでは「昨日」の話しの続き。昼はローゼンストーン夫妻にメールで誘われて大学会館の中の少し高級な店で食事。立派な食堂。会館はホテルとしても立派。自分の勤務先もSGU採択ということで国際交流促進にあたふたしているけど、そういうことを論じるならもう少しきちんと海外の大学の国際交流施設を見ておくべきでしょう。アメリカはもちろん、中国、韓国に比べても、日本は大学の国際交流施設はあまりにもお粗末。
 それはさておき、食事後は映画監督のコニー・フィールドを招いてのラウンドテーブル。60年代~70年代の活動家だったということで、そうした経験から学校では教えられない歴史に目を向けたということを話の前提に、others' history を自分がどのようなかたちで関心の対象としているかを説明しました。最初に驚いたのは容貌の若さ。話の前提からすると60代には入っているはずだけど、どう見ても40代(面前でも確認しました)。ドキュメンタリー部門でアカデミー賞を取っていて、こちらでの知名度はかなり高いけど、アフリカなどを素材とした作品の多くを見たことがなく、その作品を追った話なのでそこが残念でした。
 その後は、参加を予定していた Media, Memory, and Nationalism というセッションがキャンセルになったので、自分が発表する会場の下見を兼ねて、Representations of Leadership and Empowerment in Film and Media という会に参加しました。発表者は Mbay Seye (University of Bayreuth)、出身はセネガルで男性、セネガル映画での女性の扱われ方を紹介しました。一人は離婚後の自活を扱ったもの、もう一つは刑務所での?女性のホモセクシャリティを扱ったものです。面白そうなのですが、やはり映画を見ていないので、その点どうしてもわかりにくい。もう一人は、Christina Hodel (University of Canzas) 。大統領候補や女性キャスターを例にとり、その描かれ方を論じました。メディアでのエリート、メディアがエリートとして扱う女性の問題です。いろいろな論じ方が可能で、このテーマはこれからも論じられていきそうです。最後に発表をしたのは、Robert Hensly-King ( Ghent University) 。1970年代のハリウッド映画に登場したアンティヒーローの造形についてです。扱われたのが『タクシードライヴァー』『卒業』で、これは自分にはわかりやすいところがありました。「男性」としての責任を回避した決断をしないモラトリアム人間。成長やリーダーシップの可能性を持たない人々が主人公とされたということです。ただ自分から見ると、主人公の造形は説明しても時代背景の認識がやや希薄。日本でもジョージ秋山の『ゼロリンマン』やショーケンと水谷豊のテレビ番組があった時代。この問題は国際的にも見られると思いました。
 ここまでで感じたことは、全体としてはフィルムスタディーが多いこと。個々の作品を素材にそれを論じるという傾向がありました。言っては悪いけど、昔の日本の大学での語学・文学の先生の作品論的な論文と同じで、もう少しいろいろな素材を幅広く見たり、きちんとした方法的視点をふまえた議論をする必要を発表からは感じました。もっとも多くの人がすでに准教授や助教として職を得ているようで、マスカルチャーやサブカルチャーへの関心の高まりが、現在の海外の大学の一つの状況のようです。
by pastandhistories | 2015-06-20 20:13 | Trackback | Comments(0)

IAMHIST(2)

昨晩は土砂降りの雨。いわば『七人の侍』の決戦の前夜。11時に寝たのに、時差で2時に起きて、もう一度寝ようと二時間ほど努力したけど、眠れないので結局はぺーパーの書き残しを書きました。そのまま会場へ。眠たいことは眠たいけど、今日は収穫がありました。
 まず最初は基調報告。映像を含めた資料のデジタル化をしている人の報告。二人に女性によって行われ、話の内容は当然いかに時間と費用が掛かるのかという話です。次はNostalgic Media and Mediatized Nostalgia というセッション。タイトルだけではわからないところがありあまり期待はしていなかったけど、これはよかったですね。一番よかったのは報告者の力量が安定していたこと。偶然だろうけど、こうしたセッションはなかなか出会えないところがあります。
 最初は、Morina La Barba (ジュネーブ大学)。20世紀中庸のイタリアからのスイスへの移民を扱い、それが本人の二重性、子供の問題、成長した2世の問題、そして不況の到来による失業、へというかたちで問題化していったことを映画がどのように扱ったのかを説明しました。日本でも同じ問題はあるわけだけど、スイスの20世紀中葉が経済的繁栄期でイタリア移民があったということはあまり知らなかったので、その意味でも興味深く聞けました。次はMuhammad Asghar というパキスタン出身者。現在はドイツの Muthehsius Academy に所属しているようですが、扱ったのは 露店で売られているような聖職者の似顔絵などが、階級を問わず多くの家庭で部屋に飾られているという問題。偶像崇拝とは背理することが、日常世界には見られるという話です。その次が Ryan Lizardi という人物。スーパーマリオとドンキーコングのキャラがデジタル技術の進歩に伴って変化してきたということなのですが、話の中心はもはや任天堂が商品化していない初期キャラが立派にいたるところで商品化され、通用しているという話です。あることが爆発的なかたちで一般に認識されると、それが再帰的なキャラとして定着していくという話。與那覇さんが歴史上の人物を素材に論じた話です。さらにもう一人、明日のセッションがキャンセルになったということで追加発表したのが Ekaterina Kalinnina、現在はスウェーデンの大学に属していますが、扱ったのはこの二十年間にソ連がどのような過去として認識されているのかという問題です。レモンド・ウィリアムスの theory of structure of feeling という概念を借りて、この問題に対する方法論のあり方を論じました。三つほどの枠組みを用いて、またそれぞれを三つの視角から」分析しようとするもの。ノートを取りましたが、細かくてここでは紹介するスペースがありません。ソ連史研究者はこの人の名前を覚えておくといいかもしれません。
 このセッションでは最後に司会をしていた Katharina Niemeyer (パリ第二大学)という女性研究者から名指しでと質問するように求められました。突然だったので、それは明日の発表でということにしましたが、名指しされた理由はよくわかりません。
by pastandhistories | 2015-06-20 08:29 | Trackback | Comments(0)

IAMHIST

 外国にいるときに書き始めたのがこのブログ。日本では忙しいし、どうしても他の仕事に気持ちがとられるけど、外国では宿では一人だし、時差もあって、逆に時間が生まれます。今はその時差が11時間違いの、つまり日本とはほぼ正対する経度にあるインディアナです。ここにきて一番意外だったのは、日本と同じような気候であること。とにかく蒸し暑く、時々雨も降ります。
 インディアナに来たのはIAMHISTに参加をするため。テレビ・ラジオを含めた映像・音声メディアと歴史の関係を、広くサブカルチャーを含めて議論している学会です。創刊号からその機関誌は入手していて、以前から参加したかったけど時期的には難しくあきらめていました。今回はロバート・ローゼンストーンがキースピーカーということで参加しました。
 そのローゼンストーンの講演は初日。内容は今回訳されるものと一致する点も多いけど、具体例としては『レッド』のほうを利用して論じました。内容は翻訳に譲るけど、そこではあまり触れていなかった、HIstory OF media とHIstory IN media の違いを強調していました(もちろん彼は後者の立場です)。日本に来た奥さんとも会えて、個人的にはよかったところがありました。
 会はパラレルセッションが今日から。しかし、時差の11時間は強烈で、午後3時頃は起きてはいるけど聞いているのか、寝ているのかがよくわからない感じです(今は夜だけど、日本では起きている時間なので、まったく眠くなりません)。まずは赤狩り期の映画についてということで、ニコラス・レイやフレッド・ジンネマンを論じたものに出たけど、発表時間が短いと映画論はどうしても作品論になってしまうところがあり、こちらの集中力も欠けているいるところもあり、今いちでした。
 しかし、参加者の割には全世界的に人が集まっていて、かなり研究としては定着してきた感じです。日本の若手研究者の、たとえばサブカルチャーと歴史の関係を論じている人は、ぜひ発表の場として利用するとよいという印象を持ちました。
by pastandhistories | 2015-06-19 11:56 | Trackback | Comments(0)

研究会の再開

 大分雑用に慣れて、その間に仕事をしています。一つは何度か書いた論文集の編集、ほぼ初校のゲラが出揃いました。もう一つは来週アメリカでする小さな報告、何とか間に合わせます。
 あわせて招聘研究会の準備をしています。昨年は応募資格がなかったのですが、今年は多少の予算が付き、再開することになりました。予定としては、7月11日、12日にまず Berber Bevernage に来てもらいます。通訳付きの公開の会は7月11日(もちろん12日の会も誰でも参加OKです)。ここで紹介したことがあると思いますが、ベルギーのゲント大学(ガンやヘントとも発音すると思いますが、現地ではむしろゲントと発音していました)に属する若手研究者。昨年来てもらったカレ・ピヒライネン(今回の翻訳からこう表記します)とともに、INTH(国際歴史理論ネットワーク)を組織している人物です。とにかく魅力的で、将来を期待される人物。タイトルは彼の本から一部をとって「歴史・記憶・暴力」とする予定です。
 もう一つは、8月31日~9月1日に行います。これは中国の国際歴史学会議の後に設定されたもの。初来日者である参加者も内定していて、現在は飛行機の切符の確保の段階。今月中には内容を確定していきます。
 今日は宣伝で終わりですが、それなりに面白い会になりそうなので、関心のある人はぜひ日程を開けておいてください。
by pastandhistories | 2015-06-08 06:06 | Trackback | Comments(0)

カテゴリ

全体
未分類

以前の記事

2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 01月

フォロー中のブログ

最新のコメント

先生は、「「民主主義」擁..
by 伊豆川 at 19:57
先生は、「歴史が科学であ..
by 伊豆川 at 17:18
『開かれた歴史へ 脱構築..
by 伊豆川 at 13:28
3月18日の会に参加させ..
by 伊豆川 at 08:33
セミナーで配布・訳読され..
by 伊豆川 at 14:44
先生の議論には、大筋で同..
by 伊豆川 at 17:10
私も今回のセミナーに参加..
by 伊豆川 at 18:55
先生が制度化された「真実..
by 伊豆川 at 00:29
先日、ヘイドン・ホワイト..
by 伊豆川 at 20:53
人間に関心や理解を促す語..
by 伊豆川 at 22:33

メモ帳

最新のトラックバック

「変化する可能性」
from 右近の日々是好日。
プラグマティズム
from 哲学はなぜ間違うのか?

ライフログ

検索

タグ

その他のジャンル

ブログパーツ

最新の記事

look at, look ..
at 2017-08-18 14:07
ボーダースタディーズ
at 2017-08-09 11:48
今週の予定、今後の予定
at 2017-08-02 09:12
プロフィール②
at 2017-07-30 10:10
比較史②
at 2017-07-25 10:18

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

歴史
哲学・思想

画像一覧