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歴史的真実、違和、不信

今日はツイッター的に。『思想」11月号にヘイドン・ホワイト「歴史的真実・違和・不信」が訳出されました。もっとも新しい論考で、訳者は上村忠男さんです。既に予告してあるように、12月23日(金)に上村忠男さんとカレ・ピヒライネンに来てもらって「ヘイドン・ホワイトの今」という会をします。明日、ピヒライネンと打ち合わせをするので、ついでに神保町で買います。なお目次を見ただけですが、今度の号はヨーロッパ中世史についての特集のようです。池上俊一さんと、以前ホワイトを訳出した那須敬さんなどが書いています。
by pastandhistories | 2016-10-26 06:35 | Trackback | Comments(0)

Jonathon Dallimore

 今週は部屋の整理をしました。段ボールに入っていた古いノート類やメモをやっと出すことができて、少し読み直し始めました。すっかり忘れていたことも多く、その点ではやはりノートは役に立ちます。逆に最近はあまりノートをとらなくなっていて、読んだことのある本でも内容をほとんど思い出せない。そのあたりは時間との兼ね合いもあって、難しいところです。
 暇を見て今朝はネットサーフィン。たまたまですが History in Postodernity というサイトに出会いました。 Jonathon Dallimore というオ-ストラリアの若い歴史研究者(というより教員かもしれません)が作成したサイトです。30分程度ということで、それほど時間もかからないだろうということでアクセスしましたが、とてもよくまとまった議論で、論理的構成もしっかりしていて、お勧めです。
 ポストモダニズムが(歴史の)何を問題としたかを前提としながら、その〈従来の)歴史(学)に対するアプローチを、穏健なものと、極端なものに分け、前者、つまり歴史を否定するのではなく、どう変えていくのかを問題とするポストモダニズム的な歴史論を、わかりやすく説明しています。
  言語と文化への着目ー多様な史料への着目と従来の史料を新しく読み返すこと―そこから今後は、1、(個人史を含めた)ミクロヒストリー、2、文化史、3、固定されない歴史、4、刊行物以外での提示、という方向に歴史が向かっていくだろうということがその内容です。最後の部分で、学術的出版物のような査読(や検閲)を経ない歴史が,これからは意味を持つだろうとしているのは、これがネットでの発信であるという点でも、面白い(ブログをいちいち査読するなどということは本当に奇妙なことです)感じがしました。
 要するに現在にあっては、不安定性は認識対象だけの問題でなく、認識主体の問題である(これを点線をもちいた図形で示していて、とても説得的です)ということなのですが、そうした主体の不安定性、つまり主体が開かれた構造を持っていることが、対象に対する多様な認識を可能にしていくのであり、それが(歴史の、あるいはそれ以外のことに関しても)民主化(democratisation)を生み出していくという立場に立っています。ネットを見ると、最近はビッグヒストリー論で紹介されることの多いデイヴィッド・クリスチャンと多少の関係があるようです。はたして今後歴史研究者として学界に地位を占めることになるかはわかりませんが、論理的な整理・説明能力という点で、少し期待したい人物です。
 また Jonathon Dallimore はこうした視点から書かれた最近の著作として、Colin Jones, Smile Revolution, Stephan Kotkin, Magnetic Mountain, Carolyn Hobbrook, Anzac: The Unauthorised Biography, をあげています。内容はネットで確認できると思いますが、時間があれば読んでみたいと思わされました。
by pastandhistories | 2016-10-22 11:07 | Trackback | Comments(0)

globe という言葉

 10月7日、8日のグローバルヒストリーズの会は、海外からの二人のヴィザと航空切符(発券がヴィザの有無に関係する)に関して、いろいろ手間がかかって大変でした。参加者はいつもより減りましたが、内容的にはいい議論ができたと考えています。
 既に予告してありますが、次回は12月23日(金)、タイトルは「ヘイドン・ホワイトの今」となります。議論にかなりの準備が必要なテーマなので、資料のようなものをきちんと準備して会を行う予定です。関心のある人はぜひ参加してもらえればと思います。ヘイドン・ホワイトはなお元気で、最近の姿をネットでは、バークレーで行われたルニアの Moved by the Past の公開合評会(2014年11月7日)に、ハルトゥーニアン、マーティン・ジェイ、イーサン・クラインバークらとともに元気な姿を見せているのを見ることができます。相変わらず、ホワイト節全開です。
 ということで、12月の会の準備はありますが、少しのんびりしています。と言いたいところですが、今度は原稿の計画や注文が入り始めて、あまりのんびりもできません。このブログも御無沙汰気味になっています。もっともこのブログは、自分のためのメモという部分もあるので、そうしたメモ的なことを今日は書きます。
 グローバルヒストリーズの会の時に、そのことは発言しませんでしたが、多分もともとは「丸いもの」「球状のもの」を指すグローブという言葉が、地「球」を指すものとしてもちいられるようになったのは、コロンブスやマゼランの航海によって地球が地「球」であることが発見されたためなはずです。したがってそうした意味で使用され始めたのは、16世紀になってからです。地球という日本語はいったいいつから使われたのか、たぶんこれも地球が丸いということが日本の社会に受け入れられるようになってからのはずですから、やはりどんなに早くても、16世紀以降になるはずです。もしそれ以前にこの言葉が日本語で使用されていたとしたら、日本人の対自然認識は欧米に先行していたことになってしまいます。
 これにたいして英語の Earth の語源となった言葉は、そうした知識のなかった時代から「地」「土」を意味するものとして欧米では使用されていたわけです。したがって Earth を地「球」と訳すのは誤訳だという議論がありうるかもしれません。
 地球を意味するグローブという言葉はこのように相対的には新しい言葉ですが、グローバル、さらにはグローバリゼーションという言葉の使用が世界的に一般化するのは、20世紀後半、それも1980年代後半からです。もちろんグローバルヒストリーの使用はさらに新しくなります。
 この問題については今度そのグローバルヒストリー論の翻訳の出るリン・ハントが、昨年の12月にシカゴ大学で行った Thinking Globally in Historical Studies という 講演で、つい苦笑させられるような話をしています。そのなかで彼女は、Global Publication Authorship と題して、global というタイトルのついた出版物の点数の国際的な比較をしていますが、なんと1999-2003年 について統計を作表すると、日本はアメリカについで堂々の第二位(第三位はドイツとイギリス)だったそうです(その後中国、イギリスに追い抜かれて第四位になった)。
 誇っていいのか、それとも悲しむべきか、日本の社会的状況や、文化的・思想的状況を語るような話です。逆に言うと、グローバルヒストリーというタイトルを付した会の参加者は少なかったのは、日程の重なりがあったかもしれませんが、日本の歴史研究の健全さを示しているのかもしれません。これもまた逆説的な議論ですが。
by pastandhistories | 2016-10-14 11:13 | Trackback | Comments(0)

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