1989年生まれ
4月は人事異動の季節。何人かの知己の若手・中堅研究者が常勤職についたという知らせが入ってくるようです。共に喜びたいと思います。その一方で今年もという人が多かったかもしれないという状況が続いているのは残念です。定年年齢の短縮化が進んでいる一方で、常勤職につく年齢が西洋史では35,6歳になっているという話を聞きます。ということは、1989年頃に生まれた世代。いわゆる戦後「民主主義」世代と随分と発想を異にした世代です。したがって歴史認識に大きな差異があるのは当然です。「平和」「民主主義」あるいは「国家」という同じ言葉が語られても、その言葉の意味内容の大きな理解には大きな違いがあります。
最近よく考えるのは、そのことです。戦後世代から考えれば、現在国際的な場で、あるいは日本で起きていることは「帝国主義」とか「反動」という言葉を使えば容易に理解できることなのですが、新しい世代にとっては、死語なのかもしれません。
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by pastandhistories
| 2026-04-05 18:21
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記憶と世代
演劇と歴史の関係を主として論じた Tim Zumhof & Nicholas K. Johnson ( eds.), Show, Don't Tell (2020) という論文集に、アリッサ・ルビンシュタインが自分が書いた戯曲 The 614th Commandment の内容と意図、それへの反応を紹介した論文を書いています。劇自体もインタビューの内容を脚本に取り入れるというドキュメンタリー・シアターという方法で興味深く読めますが、この作品は基本的に、世代によるホロコーストについての記憶の違いをテーマとしています。直接経験したのが第一世代、両親の記憶を伝えられたのが第二世代、そして曽祖父の記憶を間接的に伝えられたのが第三世代という区分けです。
自分は1945年生まれですから、戦争については第二世代です。必ずしも両親だけによって伝えられたものではありませんが、周囲には戦争を直接経験した人たちが大勢いて、様々なメディアや学校の教師などからそうした記憶を伝えられました。戦争に対する意識が鋭敏であって、1960年代後半から70年初めにかけて反戦運動が高まった(学生運動としては全共闘運動)のはそのためです。
しかし私たちの子供の世代(現在では50歳代)の記憶のあり方は異なっています。彼らはある程度の対社会的認識を得始めた10代の時に、1989年の東欧社会主義の崩壊、冷戦の終焉に出会いました。この世代が「私たちの世代から見れば」問題意識を大きく欠いていると感じられるのはそのためです。あくまでも「私たちの世代」から見てなのですが。
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by pastandhistories
| 2026-03-12 18:34
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独立・専門化
前回第一次世界大戦の後に、新しい国家が叢生したことについて触れました。当然これらの国家は、新国家成立を正当化するためにナショナルヒストリーを作り上げています。そうした歴史では帝国の下にあった時代は民族が抑圧されていた暗黒時代として否定的に描かれます。国内に政治的対立があっても、その点では歴史認識は一致しています。前回最後が間違っていたようですが(修正しました)、それぞれの地域を専門とする日本人研究者もそうした考えにほぼ立っています。
しかし、あえて批判的に言えば、現在の学問状況ではそのことは当然の帰結かもしれません。というのは、現在では多くの研究者は当該の研究対象国に長期にわたって留学し、その国の研究者とのコネクションをもとに、議論を展開しているからです。それがそれぞれの国が現在作りだしているナショナルナラティヴを受け入れたものになりがちなのは当然だからです。
パラドキシカルなことに、多くの歴史研究者は、日本に関しては現在さらに勢いを増しつつあるはナショナルヒストリー、ナショナルナラティヴにはかなり批判的です。歴史修正主義(現在では歴史否定主義と呼ばれるようになりましたが)に批判的なのはそのためです。しかし意外なことに、ヨーロッパの20世紀以降に独立した地域的な小国家の研究者は、驚くほどナショナルヒストリーに立っています。日本の歴史研究にあるダブルスタンダードです。
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by pastandhistories
| 2026-02-28 12:02
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歴史を結果からみる
歴史への評価からは、結果から見るとわかることがあります。第一次世界大戦は帝国主義戦争であったと言われています。教科書でもまだそうした解釈が残っているかもしれません。すでにホブソンやレーニンが著作でそうした判断を下していましたし、戦争に伴った生じたロシア革命やドイツ革命は、「帝国主義戦争」への批判から生じました。
しかし、「結果」という視点から見ると、第一次戦争がもたらしたのは、オーストラリア・ハンガリー帝国とオスマン帝国の「解体」です。現在の中東、東欧における諸国分裂はその延長上に存在しています。そうした状態が、現在の対立と混乱を引き起こしているわけです。
巨大な国家が維持された方がいいのか、それとも分裂して異なった独立国家になった方がいいのか?、第一次戦争後に強く主張された民族自決という考えは後者です。それが本当に望ましいのか・・・一定の自治権を認めた緩やかな多民族国家の方がむしろ望ましいのか・・・・意外と難しい問題かもしれません。多くの中東、東欧の専門的研究者は後者の立場に立っていますが。、
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by pastandhistories
| 2026-02-23 09:04
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久し振りです
今アクセスしたら、昨年10月から書いていないことに気づきました。と言っても健康上の問題ではなく、元気です。書けなかった理由は、新書の原稿を執筆していたため。8万字以上の下書きをほぼ完成しました。多分これをブラッシュアップするには、2~3か月かかると思います。これに加えて海外の出版社から論文集への投稿依頼が来ています。昨日がアブストラクトの締め切りで、簡単なものを送ったら、受け取ったという連絡がきました。正式な依頼があるようだと、締め切りは6月中旬、結構時間をとられそうです。そんな感じで、それなりに時間に追われていますが、この間いろいろ思うこともできたので、このブログもまた続けていこうと考えています。長い文章を書いていたので、小文を書くと気分転換になりそうなので。
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by pastandhistories
| 2026-02-17 17:49
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