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近代化、グローバル化

 今日帰ります。社会科学院で、近代史研究所の人たちの前でグローバルヒストリーについて、『思想』に書いたことを軸に英語で話しました。もちろんほとんどの人は在外経験があるけど(残念ながらに在日経験のある人は京都大学に6年いた人だけ。アメリカが多く、後はドイツなど。このことは市内の車にも反映されていて、タクシーのほとんどがWRC で今やトヨタを凌駕しつつあるヒュンダイ、一般車は圧倒的にドイツ製です)、すべて質問は中国語、多分せっかくの会なのでこちらの話を参考にしながら、所員同士で議論しあいたいということなのだと思います。もちろん英語が完全も人もいて、その人たちが間に入って通訳してくれました。
 ほとんどの人が丁寧な質問をしてくれて、自分にも参考になりました。そのいくつかを紹介すると、一つは中国でのグローバリゼーションへの批判は、それがアメリカナイゼーションだという点にも置かれていること。自分がグローバリゼーション論やグローバルヒストリーは欧米中心主義への批判という面があると論じたことへの質問です。たしかにそうした部分はあって、たとえばスーパーグローバル大学に代表される大学の英語化は文字通り従属的な面すらもつアメリカナイゼーションですらあるわけです。その意味ではこの間すすめられている研究の「英語化」があまりにもナイーヴなとところがあることには、もう少し自覚的であった方がいいかもしれません。
 もう一つは、逆にグローバリゼーション、モダナイゼーションを一体化して批判的に論じることは、たとえばフェミニズムが1960年代のアメリカで本格化し、それが世界に一般化しつつあるという肯定的な問題をどう考えるのかという問題が生じるのではないかという質問です。この質問はジェンダー史をしている女性研究者から出されました。これは答えにくい問題です。自分としては近代化論は日本のナショナリズムの重要な要素で(現在のグローバリズム論もそうですが)、第二次大戦後のある時期までは戦前の天皇制批判への素材として有効に用いられたけれど、現在ではその影響を後退させているし、むしろ欧米への翼賛的同化という否定的な要素も根強いと説明したのですが、このあたりは伝わらなかったかもしれません。
 何度も中国は何回目かと聞かれました。実は最初に来たのは1989年、初めての在外経験でした(この後この年にイギリスに行ったのが初めての滞欧経験)。30年前です。天安門事件の直前。まだ外貨券しか使えず、買い物もそれが使用できる店だけ。バスからもあまり自由に降りられない。その時と王府井の風景があまりに変わっているのには本当にびっくりさせられます。30年で社会はとてつもなく変容する。その少し前だったと思うけど、『史学雑誌』の「回顧と展望」に、「労働党は退潮しサッチャー政権に代表されるネオリベラリズムの政権が永久化する」という趣旨の政治史研究者の文章に触れて、「視点が肯定すれば、物事は固定したものに見える、自由な視点を持てば、物事は様々に動くものとして見ることができるはずだ」と書いたことがあります。
 アメリカナイゼーションもまたそうですが、世界が未来永劫に同じ方向に向いて動くはずがありません。開かれた視点を持てば、多元的なものの絡み合いの中で、世界が変化していくことが理解できるはずです。そうした動きのなかに自分の研究は位置しているのかを考えることは、とても重要です。

by pastandhistories | 2018-05-17 09:26 | Trackback | Comments(0)
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