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対峙と回収

「僕は人々が『国家』とか『国益』という『大きな物語』に回収されていく状況の中で映画監督ができるのは、その『大きな物語』(右であれ左であれ)に対峙し、その物語を相対化する多様な『小さな物語』を発信し続けることであり、それが結果的にその国の文化を豊かにするのだと考えて来たし、そのスタンスはこれからも変わらないだろうことはここに改めて宣言しておこうと思う。」 
 これは是枝監督が、カンヌ映画祭の受賞後ににわかに高まったネットでの論争に対して、数日前に発した言葉です。映画祭での賞の授与も、それに対する日本政府の無視ともいえる対応も、「大きな物語」の側の対応ですから、ある意味ではどうでもいいことです。しかし、この言葉からわかることは、映画というフィクションには、小さな物語の発信という要素があることです。
 これまで自分が歴史理論という問題をとおして発信し続けてきたこともそうしたことです。映画にもまた随分と「大きな物語」への回路となる作品があります。しかし、映画という手法にあるポリフォニックな特性は、「小さな物語」を対峙することもできる。対して学問的な歴史が示していることのほとんどは、最近では細かな実証に基づくミクロ的な事実であると称しつつ、実は大きな物語に回収されていくものでしかないのか、そんなことを自分は考えています。

by pastandhistories | 2018-06-10 11:54 | Trackback | Comments(0)
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