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最初のグローバル

 今リンツです。時間は3時過ぎ。日本からヨーロッパに来るとどうしてもこの時間に起きます。もともとこのブログも外国にパソコンを持ってきた時に夜中に時間が余ってしまい、その時間を使うために何気なく始めたもの。暇つぶしからのものが、もう2年以上続いています。
 理論的なことについての問題を中心にとは考えているのですが、最近はなかなか整理したことが書けません。書きたいことは多いし、メモはけっこうあるけど、それなりにきちんとしたかたちでまとめていく時間がありません。もちろんブログなのでメモ的なものでもいいのだとは思うのですが、いざ書くとなると躊躇して今月もほとんど記事を書いていません。
 今日も閑話的なこと。「グローバル」という言葉が日本ではいつ頃からメディアに使われるようになったのかという話題。最近では各種新聞の縮刷版は電子データ化が進んでいて、こうした問題は検索機能を使用すれば簡単に知ることができる(論文?化できる)わけですが、記憶をたどると、当時は耳慣れぬこの言葉が新聞に出たのは、1960年代の終わり、スポーツ欄であったという記憶が自分には鮮明にあります。
 「グローバルリーグ」、知っている、あるいは憶えているでしょうか。今ではメジャーの主流である中南米の選手を加えて中南米で開催された、アメリカが中心のメジャーを越えようという新しい「グローバル」なプロ野球リーグの試みです。普通なら無視されたであろうこの「グローバル」な試みが、「グローバル」という言葉と共に日本のメディアに紹介されたのは、この試みに日本の元プロ野球選手が加わったため。
 自分の記憶では豊田や広岡という有名選手にも誘いがあったと報道されたと思うのですが(間違いかも知れません)、結局阪神の監督をしたこともあるカイザー田中(日本のプロ野球に最初にアメリカンスタイルを持ち込んだのは、本土出身の選手ではなくハワイ出身の選手たち、フックスライディングのウォーリー与那嶺、三振して笑顔を示したエンディ宮本といった人たちです)の誘いに乗ったのは、中日で4番を務めた森徹(当時も入試レベルは高かった早稲田学院から早稲田に入学した。中学・高校時代は柔道選手でもあった?、これも記憶では白山周辺に住んでいた?)、そして名前の通り満州生まれの矢ノ浦国満(仰木監督と同じ東筑高校の出身、池山がヤクルトに入団した時、矢ノ浦2世と呼ばれたことのあるほどの名ショート)などの選手です。
 この試みは1年もたずあえなく失敗に終わり、参加した選手たちは、「グローバル」という言葉のもの珍しさとともに物笑いの種にされました。他の例があるかもしれませんが、自分の記憶では間違いなくこの出来事がグローバルという言葉をメディアを通して記憶した最初の例です。この試みはあの1969年。その時には気付かなくても、後から振り返ると時代には象徴的なことが重なり合っていることがよくあります。
 暇つぶし的なことだと結構スラスラかけるけど、きちんとしたことは難しい。明日は参加している労働史・社会史国際会議のことを紹介するつもりです。
by pastandhistories | 2012-09-13 11:01 | Trackback | Comments(0)

『野ばら』

 「国境」についていつも思い出すのは、小川未明の短編『野ばら』である。中央から周縁とされる「国境」地帯は、区分されている場ではなく、そこに住む人の交流の場であることを示した作品である。あえて言えば「歴史」作品のなかで、これほど国境の問題を明確に論じたものはない。歴史がいかに国民と不可分であったのかということの一つの証左なのだろう。
 本来は人々や物が行き交う場に境界線が引かれ、兵士すらが置かれるようになったのは、とりわけ近代以降統合的な国家が中央にそれまでの「歴史」を無視するものとして形成されたからである。長い間存在していた周辺住民相互の共同性は恣意的に解体され、相互に隔てられることになった。
 「歴史的」には周辺の人々の交流の場であったところが、「新しく」構築された中央の国家の「古来」からの「歴史的」な領土であったわけがない。現在声高に論じられている島や島嶼は、「歴史的には」周辺漁民の共同の利用地であったはずである。そこに争いや諍いがまったくなかったわけではないかもしれないが、長い間の経験を通して、互いの利害を損なわない相互的なルールが、周辺の人々によって形成されていたはずである。伝統的な地域的共同性というのは、そうしたものであったはずである。 
 歴史が過去の事実をありのままのものとして記すものであるというのなら、歴史研究者は共同化された国家の視点からではなく、過去の個別的な人々の関係から歴史を論じていくべきである。そのことは自明なことである。しかし、そのことがなぜ果たされてこなかったのだろう。それは議論としては過去に内在していても、発話の対象が現在的な共同性にとどまっていたからだろう。
 構築された歴史によって国民的な「共同」化が進行した社会において、「国民」に対して過去の「差異」を語っても、それは実態を伴わない論理でしかない。そのことが「歴史的な領土」であるというような非論理的な言説が唱和的に語られても、そのことへの異を唱えることさえ許容されないという言説区間を作り出しているのだろう。厳しい批判かもしれないが、そうした言説空間を作り出してきたことに、歴史研究者が果たしてきた、果たしている役割は決して小さくはない。なぜなら国民を自明のものとして、その国民に対して多くの歴史研究者は「歴史」を語ってきたからである。そのことが「歴史」なるものについての常識的な理解を、「国民」の間に作り出してきたからである。「歴史的」という言葉を政治的指導者が頻用するのはそのためである。
by pastandhistories | 2012-09-02 11:18 | Trackback | Comments(0)

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